僕らはまだ知らない
時は遥かに遡って、地球国の深い森の中。
王子の側近四天王は彼らの主が会議に出席している中、四人揃ってしばしの休憩を取っていた。
『お二人のこと、どう思う?』
ジェダイトは空を見上げながらポツリと尋ねた。
彼らの中でお二人と言えば、一組の男女のことしか考えられず、残る三人は一瞬黙り込む。
『そんなことは決まっている。もう二度と会わせてはならない二人だ。本人達がどう仰ろうと…な。』
彼らのリーダーは眉間に皺を寄せながらそう答えた。
『だけど月のプリンセスに恋してから、マスター変わったよな。
前は俺たちの前じゃ感情なんて全く表さなかったのに、人間らしくなったというか…。恋する相手が誰だろうと、俺は今のマスターのほうが好きだぜ?』
『お気楽ね。ネフライトは。』
『全くだ。』
呆れた、と言うゾイサイトに続いてクンツァイトも口を開いた。
『どうして…月の人間に恋なんてしたんだろう…。』
ジェダイトの、まるで自分に当てはめているかのような口ぶりに三人ははっとなる。
『いや。恋した相手がたまたま月の人間だった。それだけのこと…。』
『ジェダイト…今の言葉は王子の四天王として余りにも無配慮だぞ。』
『分かってるさ。これは、王子の側近としてではなく、俺個人の独り言だと思ってくれ。幼いころから一緒だったエンディミオン様を心配する一人の友人としての言葉だと。』
瞳を僅かに潤ませ、顔をくしゃりと歪ませて言うジェダイトにクンツァイトは溜息を付く。
それは自分自身に付いているのかもしれなかった。
『結局、運命は決まっていても人の気持ちは変えられない。他人が変えられるものでもないってことよね。あーもう最悪!』
最悪と言いながらもゾイサイトの表情はどこか嬉しそうで、一瞬切ない色を瞳に浮かべた。
『俺達みんながさ、腹ん底から笑えるような日が…いつか来ればいいのになあ…』
ゴロリと草原に大きな体を寝転ばせてわざと明るい口調でそう言うネフライトに皆は何も答えられない。
そんな日は、永遠に来ないと思っていたから。
願ってはいても、それこそ夢物語。そう思っていたから――――――
彼等はまだ知らない。
いつの日か四人とその主の距離はこの時よりもずっと近付いて、彼等の願いも夢に終わるのではなく確かな現実として、温かく迎えてくれることを――――――
おわり
