木漏れ日(エンディミオン、ネフライト)



「どうしたんですかマスター。さっきから全然やる気ないじゃないですか!」

ネフライトと森に狩りに赴いていくらか経った頃。俺はいつもの集中力や瞬発力が全く無く、ネフライトとの差はどんどん開いていた。

それを見兼ねた長身の臣下がしびれを切らして尋ねてきたのだ。彼はいつでも王子の俺との勝負はフェアでありたいと思っていたし、何事も真剣勝負で挑んでいてくれていたから、その気持ちに応えることが出来ていない今の自分の状態が酷く申し訳なく思った。そして、彼の一切の手加減の無い王子と部下の垣根を越えたこの時間が普段から好きだった俺としても、この状況を続けたくはなかった。


「すまないネフライト。少し休憩させてくれないか?」

「了ー解。」

その言葉を待っていたと言わんばかりの彼の表情に俺はほっと息を吐いた。







森で一番の巨木の袂に腰を下ろして、先に口を開いたのは案の定ネフライトだった。

「で?何に悩んでるんだ…ですか?まあ、答えを聞かなくても分かる…りますけど。」

ネフライトが持ってきた手製のハーブティーを渡され一口飲むと、まるでぎこちなく話しかけてくる彼に苦笑した。

「いいから普通に話せ。そこがお前の良さだろ?あ、このハーブティーも美味いな。」

木が生い茂る森の中、特に巨木の下は夏の暑さは和らいではいるが暑いことには変わりはない。すっきりとした飲み心地のそれは気持ちを癒し、喉を程よく潤させた。

「じゃ遠慮なく。今はうるさいリーダーもいないしな。そうそう!このお茶な、あの背の高ーい月の守護戦士が持ってきたのを真似してみたんだ。あいつ言葉遣いや態度は荒いくせにやたらと女らしい趣味してんだよなー。」

そう話すネフライトの横顔はとても優しい目をしていた。


風が吹くと木々の葉がさわさわと音を立てて揺れる。それを目を閉じて穏やかに受けるネフライトの心の中も、自然に緩やかに伝わってくる。



「…ジュピターが、好きなのか?」

風が止んだあと、俺の口は勝手に開き問いかけた。
もう一度強い風が吹き抜けていく。

そしてそれが止んだ頃、目を開いたネフライトが口許をふと緩めて頷く。


「…かなり。」

「そうか…」

ハーブティーをもう一口飲めば、今度は少し苦くて、でも優しい味がした。
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