壁ドンをしてみよう
ゾイ亜美の場合。
※結婚後
今日は朝から雪が降っていて信じらんないくらい寒かった。
けれど私の母親からのコンサートの誘いには絶対に断らない亜美は、天候がたとえ雪でも雹でも嵐でも出掛ける。
自分の母親を、そして母親のピアノを好いてくれている事は嫌な気分はしないけれど、それにしても今日は寒すぎた。
「あーもうっ!!さっむい!!」
家に辿り着いてもちっとも暖かくない室内。ぶるぶる震える体。すぐさまソファーに掛けてあったブランケットをすっぽり被った。
「すぐにエアコンが効いてきますから。」
どこか呆れたような声で言いながら電気ケトルから二人分のカップに湯を注いでいる亜美をじっと見る。
はーーもーー…この子は。コーヒーとエアコンで確かに体は温まるかもしれないけれど、こーゆー時はもっと別の温め方ってものがあるんじゃないの?
この才媛、夫婦になってからもぜんっぜん!そーいうことには疎いんだからっ!!
寒いからイライラも増すけど、善意でしてくれてることも充分承知だから淹れてくれたインスタントコーヒーを「どーも」と言いながら受け取った。
ああ私って大人。
家に帰ってからすぐにスイッチを入れておいた風呂が沸いたことを知らせるアラーム音に亜美と私の目が合う。
「先に入ってください。」
ほら。そう言うと思った。
「いい。あなた明日は早いでしょ?それに医者が風邪でも引いたら笑えない。」
でも…と言い掛ける亜美を遮っていいからとソファーに腰を落ち着けてテレビをつけると適当にチャンネルを換えていく。
そしてコーヒーをもう一口飲んだところで一旦脱衣所に入ったはずの亜美の言葉が飛び出した。それも特大級のやつが。
「い…っいっしょに、はいりますかっ!?」
その威力にコーヒーは私の口から見事に噴射された。
「がっガス代の事もありますし、それに、寒そうにしている人を待たせるのも気が…引けます、し…」
だんだんと声が小さくなっていき顔もどんどん赤くなる亜美にぷつんと何かが切れた。目線も下がって注意がこちらに全く向いていない隙にその距離をぐんぐん縮めていく。
「や、やっぱりいいです!!なるべく早く出ますから待って…!?」
ドンッ!!!
壁に手を付き行く手を阻んで亜美の顎を掬う。
皿のように大きくした瞳が恥じらいと動揺に震えていてさらに気持ちが暴れ出す。
「逃げるの禁止。一回言ったことは取り消せないよ。亜美?」
重ねた唇はまだどちらも冷たくて、既に我慢の切れていた自身は亜美を促し音を立てて脱衣所の戸を閉めた。
※結婚後
今日は朝から雪が降っていて信じらんないくらい寒かった。
けれど私の母親からのコンサートの誘いには絶対に断らない亜美は、天候がたとえ雪でも雹でも嵐でも出掛ける。
自分の母親を、そして母親のピアノを好いてくれている事は嫌な気分はしないけれど、それにしても今日は寒すぎた。
「あーもうっ!!さっむい!!」
家に辿り着いてもちっとも暖かくない室内。ぶるぶる震える体。すぐさまソファーに掛けてあったブランケットをすっぽり被った。
「すぐにエアコンが効いてきますから。」
どこか呆れたような声で言いながら電気ケトルから二人分のカップに湯を注いでいる亜美をじっと見る。
はーーもーー…この子は。コーヒーとエアコンで確かに体は温まるかもしれないけれど、こーゆー時はもっと別の温め方ってものがあるんじゃないの?
この才媛、夫婦になってからもぜんっぜん!そーいうことには疎いんだからっ!!
寒いからイライラも増すけど、善意でしてくれてることも充分承知だから淹れてくれたインスタントコーヒーを「どーも」と言いながら受け取った。
ああ私って大人。
家に帰ってからすぐにスイッチを入れておいた風呂が沸いたことを知らせるアラーム音に亜美と私の目が合う。
「先に入ってください。」
ほら。そう言うと思った。
「いい。あなた明日は早いでしょ?それに医者が風邪でも引いたら笑えない。」
でも…と言い掛ける亜美を遮っていいからとソファーに腰を落ち着けてテレビをつけると適当にチャンネルを換えていく。
そしてコーヒーをもう一口飲んだところで一旦脱衣所に入ったはずの亜美の言葉が飛び出した。それも特大級のやつが。
「い…っいっしょに、はいりますかっ!?」
その威力にコーヒーは私の口から見事に噴射された。
「がっガス代の事もありますし、それに、寒そうにしている人を待たせるのも気が…引けます、し…」
だんだんと声が小さくなっていき顔もどんどん赤くなる亜美にぷつんと何かが切れた。目線も下がって注意がこちらに全く向いていない隙にその距離をぐんぐん縮めていく。
「や、やっぱりいいです!!なるべく早く出ますから待って…!?」
ドンッ!!!
壁に手を付き行く手を阻んで亜美の顎を掬う。
皿のように大きくした瞳が恥じらいと動揺に震えていてさらに気持ちが暴れ出す。
「逃げるの禁止。一回言ったことは取り消せないよ。亜美?」
重ねた唇はまだどちらも冷たくて、既に我慢の切れていた自身は亜美を促し音を立てて脱衣所の戸を閉めた。