壁ドンをしてみよう
クン美奈の場合。
※付き合ってから数ヶ月。
ドンッ!!
「ぎゃっ!」
リビングから出て行こうとした美奈子の背後からそのドアをその家の主に勢いよく閉められて悲鳴を上げた。あまりの唐突さに額まで打ってしまい「いたた…」とさすって涙目になっている。
「…色気の無い声だな。」
「うっさいわね!賢人が驚かすからでしょ!?しかも痛いし!!」
振り向くと憮然とした表情の賢人が見下ろしていた。その灰色の瞳に見つめられると美奈子は金縛りにでもあったかのように動けなくなる。
額をさすっていた手を空いている手で取られて更に顔が近付き、美奈子は目に見えて狼狽した。
「帰るのか。」
額を撫でられびくりと体が動いて熱が顔に集中する。
「え…っうん、だ…っだってあんたが言ったんじゃない!真面目に試験勉強しろって。」
散々ごねて昨夜は泊まらせてもらったのだ。ずっと渋っていた賢人が最後に了承したのは、今日は必ず勉強をするという約束をしたからである。
「相変わらず馬鹿だなお前は。」
「なっなによ!!!」
「勉強に必要なものは持っているんだろう?」
「そ…れは、かばんに全部入ってるけど…」
持っていた通学鞄に目を落とす美奈子は賢人の態度に腹を立てながらも、一体この男は何を言おうとしているのか全く分からず混乱する。見つめられるだけでうるさく響く自分の鼓動が恨めしい。
「ここですればいいだろう。」
「…え?」
引き止めるようなその言葉に心臓が鳴り、目を見開き彼を映すが、その表情からはやはり何を考えているのか全く読み取れない。
「何で…」
「何でもだ。」
「は!?」
有無を言わさぬ彼の態度に眉間に皺を寄せて睨む美奈子は、その直後に落とされた額への唐突な唇の感触に固まった。
「悪かった。侘びに俺が勉強をみてやろう。」
「は、はあ!!??」
悪い顔をして笑う賢人に精一杯睨み返す美奈子だが、その顔は非常に赤く瞳も弱々しく潤んでいるため全くと言っていいほど勝ち目は無かった。
ドアの手が離れて頭にポンと落とされる。
「言っておくが、俺はかなり厳しいぞ。」
「わ、私だって亜美ちゃんに言わせればかなり手強い生徒なんだから!!」
「…自慢することか。」
溜め息を付いてからの心底呆れたような発言に「見てなさいよ!!」と変に気合を入れて再びリビングの中央に向かった美奈子は気付かない。
自分のことを見つめる、恋人のやわらかな微笑みを。
※付き合ってから数ヶ月。
ドンッ!!
「ぎゃっ!」
リビングから出て行こうとした美奈子の背後からそのドアをその家の主に勢いよく閉められて悲鳴を上げた。あまりの唐突さに額まで打ってしまい「いたた…」とさすって涙目になっている。
「…色気の無い声だな。」
「うっさいわね!賢人が驚かすからでしょ!?しかも痛いし!!」
振り向くと憮然とした表情の賢人が見下ろしていた。その灰色の瞳に見つめられると美奈子は金縛りにでもあったかのように動けなくなる。
額をさすっていた手を空いている手で取られて更に顔が近付き、美奈子は目に見えて狼狽した。
「帰るのか。」
額を撫でられびくりと体が動いて熱が顔に集中する。
「え…っうん、だ…っだってあんたが言ったんじゃない!真面目に試験勉強しろって。」
散々ごねて昨夜は泊まらせてもらったのだ。ずっと渋っていた賢人が最後に了承したのは、今日は必ず勉強をするという約束をしたからである。
「相変わらず馬鹿だなお前は。」
「なっなによ!!!」
「勉強に必要なものは持っているんだろう?」
「そ…れは、かばんに全部入ってるけど…」
持っていた通学鞄に目を落とす美奈子は賢人の態度に腹を立てながらも、一体この男は何を言おうとしているのか全く分からず混乱する。見つめられるだけでうるさく響く自分の鼓動が恨めしい。
「ここですればいいだろう。」
「…え?」
引き止めるようなその言葉に心臓が鳴り、目を見開き彼を映すが、その表情からはやはり何を考えているのか全く読み取れない。
「何で…」
「何でもだ。」
「は!?」
有無を言わさぬ彼の態度に眉間に皺を寄せて睨む美奈子は、その直後に落とされた額への唐突な唇の感触に固まった。
「悪かった。侘びに俺が勉強をみてやろう。」
「は、はあ!!??」
悪い顔をして笑う賢人に精一杯睨み返す美奈子だが、その顔は非常に赤く瞳も弱々しく潤んでいるため全くと言っていいほど勝ち目は無かった。
ドアの手が離れて頭にポンと落とされる。
「言っておくが、俺はかなり厳しいぞ。」
「わ、私だって亜美ちゃんに言わせればかなり手強い生徒なんだから!!」
「…自慢することか。」
溜め息を付いてからの心底呆れたような発言に「見てなさいよ!!」と変に気合を入れて再びリビングの中央に向かった美奈子は気付かない。
自分のことを見つめる、恋人のやわらかな微笑みを。