体育祭に行った彼氏VSチアガール彼女
そして迎えた体育祭当日。
衛は正直うさぎがチアをやることを聞いて嫌な予感しかしていなかった。
『今年はね、美奈Pと亜美ちゃんとチアガールやるんだよ!まもちゃんも絶対見に来てね♪』
『チアって、うさ部活やってたっけ?』
『体育祭限定のチアなの♪いっぱい練習して頑張るからまもちゃんにも見せたくて!』
『…ジャージとか、体操着でやるんだよな?』
『ううん!本番はちゃんと可愛いチアの衣装着るんだよ♪美奈Pが張り切って注文してたから!』
『…そうか。』
と、いうことは短いひらひらのスカートを履くのか。
衛は表情を曇らせる。
別に戦士のときはそれこそかなり短い丈の戦闘服だったしそれについてはもう言及するつもりは無いけれど。
当日はたくさんの生徒がそれを見るのだ。大体、この前に行った実習中でも彼女の人気振りは予想を超えるものだった。
彼氏として複雑な気分は拭い去れない。
『まもちゃん?』
それでも大変ではあるけれど嬉しそうに練習の事を語り、本番をとても楽しみにしている彼女のことを考えると極めて器の小さい己の本心を語ることも出来ず。
『分かった。見に行くよ。張り切りすぎてこけたりするなよ?』
頭をわしゃわしゃ撫でながら言う衛に頬を膨らませながらもうさぎは嬉しそうに微笑んだ。
しかし衛は完全には分かっていなかった。うさぎがチアの衣装を着ている様を想像するのと、実際見るのとでは全然違うのだということを。
「暑いわねー全く。5月に体育祭やるなんてバカじゃない!?」
「男が日傘なんて差すな。暑いならそのUVカットの長袖のシャツを脱いだらどうだ。」
「まこと…野郎共と応援団に出るとか何考えてるんだよ…チアが良かったなー俺は。まことのチアガール…ぜってー可愛いのに…」
個性的な友人の相変わらずな会話に衛は溜め息を付く。
賢人は美奈子に誘われたから気乗りはしないもののここにいるのだが。
晃は賢人と衛に話を聞いてまことも当然チアをやると信じて彼女に聞いたところ、学ランを着て応援団に出るとの解答に二時間は論争という名の喧嘩を繰り広げたそうだ。「何でチアガールやらないんだ女の子はチアだろチアチア!!」「チアより応援団の方がかっこいいじゃんか女の子は○○って決め付けんなこのバカ!!変態!!」という態である。
結果。怒ったまことに「来るな」と手酷く洗礼を浴びたはずだった。
しかし残る男が一番問題である。そう。要に至っては誘われてすらいなかった。亜美の性格上、元々派手なことは不似合いだと思い込んでいる節があり、それを彼氏に見せられるほどの勇気も度胸も無かった。何せ相手がこの要なのだ。これをネタに何を言われるか想像するだけでも羞恥に耐えられなかったのである。
それなのに彼はやって来た。勿論亜美をからかうのが目的だ。が、しかし彼もまた、亜美の実際のチアガール姿を見ていないからそんな悠長なことを考えることができたのだが。
チアガールと応援団は開会式の後デモンストレーションとして、初めにそれぞれ単独で交互に披露される。そして午後の部の最初にもう一度同じように披露され、メインの試合の時にはそれを応援する形で演じたりとなかなかハードだ。
四人は初めの舞台を見るために開会式から校庭の来賓席のすぐ横のかなりいい位置を陣取っていた。
しかしテンポのいい音楽がかかると、途端に開会式を終えた生徒たちがごった返しで彼らの前に群がり声援を飛ばす。
そんな生徒(主に男子)に面食らいながらも、現れたチアガールの姿に晃を除いた三人は石化した。