僕らの日常
「あの二人、大丈夫かな。」
瑛二が去った後、何となく先行き不安な思いが拭えなくて言った。
「大丈夫だよ!今までは瑛二さんばっかりが好きなのかと思ってたけど、今日の話聞いて、案外レイちゃんも瑛二さんのこと好きって分かったし。」
「まあ…そうだな。」
うさの笑顔を見ていると、本当に大丈夫だと思えてしまう。
「まもちゃんもわざと付き合うのやめろとか言ったんでしょ?びっくりしたよ。」
「はは、ごめん。」
「だけど、急に静かになったね~。」
玄関からリビングに戻ってソファーに腰掛けて言う彼女に黙って近付く。
そしてそのまま彼女の膝の上に頭を乗せて寝転んだ。
「わ!?まもちゃん!?」
「……疲れた。」
目を閉じたまま言うと、慌てふためく彼女の動作に小さく笑う。
「あの、えーっと…お疲れ様。」
ふわっと彼女の温かい手が前髪に触れて額を撫でる。
それがとても心地良くて急速に癒されていくのを感じていた。
「あの…まもちゃん?」
「ん?」
「私といても…疲れない?」
額に乗せられた手を掴んで目を開ける。
「…逆だよ。うさといると、俺はどんな時でも元気になれるんだ。」
「そっか♪嬉しいな。」
「ここも柔らかいし。」
頭を擦り付けるように二三度動かすと彼女はくすくす笑う。
「やっぱりまもちゃんて、賢人さんたちと会ってるときと二人っきりのときと全然違うよね。」
「何?」
「えっとね、皆といる時は男同士って感じで楽しいけど、今は甘えん坊さんな男の子!」
光が差し込むような笑顔で言う内容に何となく自分がかっこ悪いような気がして拗ねるように軽く睨んだものの、そういう自分を変えようとも思わなかった。
そんな俺のことも彼女は全部包み込んでくれていることを知っているから。
俺、すごく贅沢かも。
こんな彼女が当たり前のようにいつも側にいてくれているなんて。
「ねえまもちゃん?」
彼女の頬はほんのり色付いていて瞳も潤ませている。
「キス、していい?」
得意の甘えた表情での申し出に流されそうになるけれど。
「駄目。」
「ええ!?」
涙目になる彼女の頬に手を伸ばすと体を起こす。
「俺がするから。」
微笑んで言うと、真っ赤になる彼女。
頬を撫で、唇をそっと親指で撫でる。
閉じられていく彼女の瞳。
ようやく重ねることができた唇。
そっと離れると、開いた彼女の瞳が俺を映して揺れていた。瞳の中のその顔はまだ足りないと言っている様で、なんだか少し気恥ずかしさもあったけれど実際その通りだったから思いのままに彼女を力強く抱き締めた。
「今日、泊まっていくだろ?」
「うん…」
「じゃあ、このまま…いいよな?」
柔らかく、でも拒否権はないように。
そんな問い掛けに黙って頷く彼女の腰に腕を回した。
「今頃みんな、ラブラブしてるといいな~」
布団に包まって俺の腕を枕にして言う彼女の言葉にどこか気のない返事をする。
「あーまもちゃん!友達のことはちゃんと大事にしなくちゃ駄目だよ?」
「大丈夫。あいつらは俺らが思っているよりも上手くいってるよ。それに知り合いのそういうところを考えるのは正直ちょっと…。せっかく今はうさとこうしているんだから。」
抱き寄せて額にキスをすると彼女の顔はボッと赤くなる。
「べ!別に!!そういう意味でラブラブって言った訳じゃ…!!」
「いいから。今度はうさがキスして?」
「…もーまもちゃんてば。」
言いながらも寄せられる唇。
まだ夜はこれからだ。
俺は失われた休日を取り戻すように一晩中、彼女を離そうとはしなかった。
その後、うさのところに仲間から惚気(半分苦情半分の)電話が来たことは別の話。
