僕らの日常
「おい!うさにやらせるな。自分たちで適当にやれ。どこに何があるか知ってるだろ。」
キッチンであいつらからの無理な注文を受けて頭の中がグルグルになっている彼女を見て俺は四人に一喝した。
「じゃあ私は衛が淹れたクイーンズメリーがいいわ。」
「俺はコーヒーにミルク一滴で。」
要と瑛二が順に言う。
「俺は難しいことは言わないぞ衛。緑茶でいい。ただし熱湯にだけはしないでくれ。あと、ちゃんと蒸らすことも忘れないでもらいたいんだが。」
「俺ビール!」
「お前ら人の話聞いてたか!?」
続いて言った賢人と晃の言葉にいい加減腹が立って叫べば、四人はびくりと肩を揺らす。うさまで俺の大声に目を白黒させていた。
一人ひとりの顔を確認した後、大きなため息を付く。
「お前らの話はちゃんと聞くから、自分のことは自分でしろ。分かったか?」
その言葉に口々に返事をする彼らを見届けると、キッチンにいるうさの腕を引いてソファーに座った。
「うさ、ごめんな色々。」
キッチンでやかんの奪い合いをしたり、ア○ヒじゃ無くてキリ○が良かったと冷蔵庫前で不満を述べている声を尻目に隣に座る彼女に詫びた。
「あははは…もう慣れました。」
「…本当にすまない。」
「いいって!本当に仲いいよね五人って。」
不意に笑顔を見せてそんな事を言う彼女に沈んでいた気持ちにぽっと明かりが灯った。
「まあ…うさたちには負けるかもしれないけどな。」
彼女を守る8人のことを思って微笑む。
「えへへ~そうかな?」
「ああ。」
頭をくしゃくしゃ撫でていると、缶ビールを片手に晃がどっかりと正面のソファーに座った。
「あーあ。俺もまことといちゃいちゃしてえ。」
プシュッと缶を開けて一口飲んでから彼はそう言った。
「じゃあまこちゃんの所に行けばいいじゃないですか?」
不思議そうに言ううさにニッコリ笑う晃。
「だよねー。でもまことは今俺を家に入れたくねえんだってさ。」
「なんでですか?」
ゴクゴクとビールを一気に飲み干す晃は今度は悪い笑顔を向けてうさを見る。
「家に来るたびに俺がまことを襲「わ!?」
言い終わる前に俺はうさの耳を思い切り塞ぐ。
今の悲鳴は彼女のものだ。
「晃、しょっぱなからうさに変なことを聞かすなよ!」
小声で晃を非難する。
「だってさ。衛なら分かるだろ?男だったら、好きな女と二人きりの状態でただお茶飲んだら終わりとかありえねえじゃん。」
「…。」
そこは否定はしないけど、だからって昼間から話す内容でもないだろ。
「まもちゃんは~本読んでるだけで終わりの日もありますよ?」
いつの間にか俺の手から逃れてそんなことを言い出す彼女に慌てたのはこの俺だ。
いや、確かにそういう日もあるけど、最終的にはそういうことに持ち込みたいという気持ちが無いわけでは無いわけで。
そうじゃなくてそんなことをニコニコと晃に教えなくてもいいだろ!
というかうさはどこまで話をちゃんと聞いて答えてるんだ!?
「衛それはマジでないわ。こんなに可愛い彼女を前にして。」
「やだも~晃さんてば♪」
可愛いという言葉を素直に受け止めるうさに力が抜ける。
「まあ、衛の聖人君子話はどうでもいいや。で、まことのところにはどうやったら戻れると思う?」
「…もうちょっとデリケートに接しろ。お前はがっつきすぎだ。」
「つまりデリケートに押し倒「きゃあ!」
再び耳を塞ぐ。
「そうじゃなくて!!まこちゃんに対する気持ちをそういう行動ばっかりじゃなくて言葉にするとか態度で示すとか。色々あるだろ。」
「へー?」
どうにも俺の言葉があまり響いてない彼は、間の抜けた相槌を打つ。
「まこちゃんは私たちの中で誰よりも乙女なんです!だから、する時はちゃんと優しくしてあげてください!」
な!?する時って…。駄目だ。誰かこの二人を止めてくれ。
「お!うさぎちゃん良いこと言うね~。オッケーオッケー☆」
「え?帰るのか?」
嬉しそうに立ち上がる晃に驚いて言った。
「まことのところ行って来るぜ!ありがとな二人とも!」
「おい!」
根本的な解決はしてないのに、えらく満足げな笑顔を残して去っていく。
「うさ…話の内容、ちゃんと分かってたのか?」
「え?キスの話でしょ?」
「…。」
