僕らの日常
『おい衛、何をしている。早く開けろ。』
賢人が片側の眉を上げて不平を述べる。
『うさぎさんとまた二人だけの世界か?そんなのどうでもいいから俺の話を聞いてくれ。』
瑛二こそ自分の世界に入り込んでいるかのように傾けた顔で目を閉じ、手をわざとらしく眉間辺りに当てながら長い溜め息を付いている。
『こっちは寒いのよ!春だっていうのにいつまで経っても…私の春はどこなのよ!!』
後半、不明なことを叫ぶ要は本気で睨んでいる。
ああもう何なんだよ。
『あ、こんな時の為に合鍵あるぜ☆』
は?
晃のあっけらかんと言い放った言葉にフリーズする。
『それを早く言わないか晃。』
隣では大真面目に賢人が言って促している。
俺は瞬時に玄関へと直行した。
バン!
そんな音が勢いよくドアを開けると鳴り響く。それはいざ鍵穴に差し込もうとしていた晃の額に扉が思い切り当たった音だった。
当てたのはもちろんわざとだ。
「うわ!晃さん大丈夫ですか!?」
後ろからうさがオロオロと声を掛ける。
「晃、それ、渡してもらおうか?」
「いってえなあ!!謝りもなしかよ?!」
「先に謝るのはお前だろ。ん?」
一体いつ作ったかも知れない合鍵を寄越せと手を差し出して尋ねる。
「わーるかったって!ほらこれでいいだろ!?」
チャリっと鍵を俺の掌に載せると、もう痛みを忘れたかのような笑みを作る。
実際、屈強な体の持ち主の彼は本当にもう痛みを感じてなどいないのだろう。
「よし、上がらせてもらうぞ。」
「お邪魔します。」
「うさぎは帰ってもいいのよ?」
「な!?帰りませんから!!」
賢人の言葉を封切りに次々と俺の許可を得る前に上がり込んでいく彼ら。
「衛だけ彼女とラブラブなんてさせないぜ。」
最後に玄関に入った晃がそんなことを耳打ちして通り過ぎていく。
「待った!」
晃の肩を掴んで振り向かせる。
「お前に限ったことじゃないが、自分の彼女と上手く行かない度に家に来るのはやめろ。それと得体の知れない合鍵の予備はもうないだろうな?」
「石の時は居候してても文句言わなかったくせに冷てえなあ。安心しろよ。男の部屋の鍵をそんなに何個も作るわけねえじゃん。気持ち悪い。」
「おっ前…!!」
「うさぎちゃーん!何か飲み物出してくれね~?」
おどけた顔でふざけたことを言う晃に言い返そうとしたときには颯爽とリビングに移動し、そんな事を注文していて脱力してしまう。
「あいつらの話を聞くまでは俺の休日も夢のまた夢…か。」
なぜか玄関に一人残された部屋の主である俺は、リビングからの騒々しい声を半ば諦めた思いで聞いていた。
あいつらに対して結局最後には甘い自分に苦笑いしながら。
