風邪を引いたカレカノ
クン美奈
※賢人社会人、美奈子短大生
「もうっ!!なあんで私に言わないのよあの男は!!」
私は悪態を付きながら全速力で目的地へと駆けて行った。
気持ちのいいお天気の日曜日。昨日の電話で我が愛しの彼氏様からは休日出勤するから無理だとデートを断られ、私はアルテミスにそれはもうグチグチ愚痴を零しながらショッピングに付き合ってもらっていた。
そしたら偶然薬局から出てくる長身の友人の長身の彼と鉢合わせたのだ。
「よお美奈ちゃん!アルテミスも。これから見舞いに行くんだろ?」
「え?」
「丁度良かったぜー!俺この後まことと約束あるんだよ。これ、あいつに持ってってやって?」
「見舞い?これって…風邪薬?」
唐突に当然のように頼んでくるあっきーに付いていけない私は手渡された袋(風邪薬にスポーツドリンクの入った袋と、なぜか大量のプリンと長ネギ一本の入った袋の二つだ。)とあっきーを交互に見る。
「あれ!?何、知らねえの?はっはーん、あいつ美奈ちゃんには格好付けてんだな。ったくしょうがねえ奴だなぁ」
驚きながらも面白がって言うあっきーは、そのあとちょっと困った顔をして笑って教えてくれた。
「実はさ―――」
『ピンポンピンポンピポピポピンポーン!!!』
『うるさいぞ晃。俺は病人だ。そして大いに近所迷惑だ。』
インターホン越しに聴こえてくる尊大な声に鼻息荒く答える。
「私だけど!!」
『………帰れ。』
「なっ!?」
私が言い返そうとしたとき肩に乗っていたアルテミスが「美奈落ち着けって」と先に答えた。
「薬あるんですけどーいらないんだなー?」
『…………まってろ。』
おっそろしく低い声で返してきた賢人は漸くドアを開けてきた。
「俺は晃に頼んだはずなんだが。あいつも頼まれたことを途中で放棄するなんてどういうことだ。いいか美奈子、お前はその袋を置いたらすぐに帰れ。」
「あのー賢人?美奈もう入ってるぜ?」
「……」
私は靴を脱ぎながら、アルテミスのツッコミにも反応せずドアを開けたまま固まっている賢人を見て思う。
……重症だわ。これ。
リビングのテーブルにあっきーから預かった袋の中身を出していく。ソファーに座った賢人は珍しくぼんやりとその様子を見ていた。ベッドで寝てといくら言っても何故か意地でもそこを動かなかったから私もアルテミスも放置だ。
「ねえ賢人って甘いの苦手よね?」
「ああ。」
「じゃあこの大量のプリンは何?あっきーの悪ふざけ?」
「俺は風邪のときはそれしか体が受け付けない。」
「は!?」
大真面目にそう言ってのける恋人に目を丸くした後。プリンをたくさん食べる賢人を想像して大爆笑してしまう私。そしてアルテミス。
「病人を餌によくそれだけ笑ってくれるな。いいからさっさと寄越せ。」
「よこせって…っっっぷ、あははっプリンを?あはっっちょ、だめお腹痛いーーっ」
「本当に失礼な奴だなお前は。だから嫌だったんだお前に知られるのは。こうやって笑われて馬鹿にされるのが目に見えてたからな。」
「っく、あははごめんごめん!はいっどうぞ♪」
馬鹿にしてるわけじゃないわよ。ただ単純に、弱ってる賢人が可愛いなって思っただけ。
でも、そんな風に言ったらこのプライド男は仏頂面になるに違いないから今は言わないでおいた。
だから気を取り直すように隣に座った私は一つ開けたプリンをスプーンですくって賢人の口の前まで運んであげた。
「はい、あーん♪」
もちろん、当然何かしら温度の低いことを言って自分で食べ出すかと思っていたのに。
「ん。」
「へ!?」
信じられないことにものすごーく素直にそれを口で受ける恋人に今度は私が固まった。
コンタクトもメガネもしてないからかやっぱりぼんやりと私を見る目と、熱で少し汗ばんだ首筋から肌蹴た胸元まで見えて妙に体温が上がる。
「あ、あははは!やっぱあんた相当具合悪いのね!しょうがないから長ネギうどんでも愛の女神様が作ってあげるから待ってなさいよっ!」
足元で私の発言にひっと青ざめるオス猫を従えてキッチンに向かおうとしたら。
「待て。」
くんっと腕を引かれて呼び止められる。
「ネギは別の用途で使うから調理しないでくれ。それに俺は途中で放棄する奴は嫌いだ。」
「な、なにいって…」
「早くしろ。」
そうやってどこか切実に灰色の瞳に請われたら…拒めない。
このバカ賢人っ!なによ甘えちゃって!!
要するに最後までプリンを食わせろってことじゃない!嬉しいからいーけど!!
「もう!ど・う・ぞ!」
ソファーに座り直してプリンをすくったスプーンを持つ。そしたら彼の口が思ったよりも高い位置に来た、と思った瞬間。
額に触れた。
「な…っなん…っっ」
赤面する私にお構いなしに「ほらはやく食わせろ」とスプーンを持った手を促して不遜に、どこか嬉しそうに言う賢人。
こいつ…っ開き直りやがりましたわね…っっ
そんな中やれやれって顔をして帰っていくアルテミスの後姿が恋人の肩越しに見えて、かーなーり気恥ずかしくもなるけれど、咳払いを一つしてから可愛いプリンと本当に全っ然可愛くない恋人と、こんちきしょうと向き合った。
※賢人社会人、美奈子短大生
「もうっ!!なあんで私に言わないのよあの男は!!」
私は悪態を付きながら全速力で目的地へと駆けて行った。
気持ちのいいお天気の日曜日。昨日の電話で我が愛しの彼氏様からは休日出勤するから無理だとデートを断られ、私はアルテミスにそれはもうグチグチ愚痴を零しながらショッピングに付き合ってもらっていた。
そしたら偶然薬局から出てくる長身の友人の長身の彼と鉢合わせたのだ。
「よお美奈ちゃん!アルテミスも。これから見舞いに行くんだろ?」
「え?」
「丁度良かったぜー!俺この後まことと約束あるんだよ。これ、あいつに持ってってやって?」
「見舞い?これって…風邪薬?」
唐突に当然のように頼んでくるあっきーに付いていけない私は手渡された袋(風邪薬にスポーツドリンクの入った袋と、なぜか大量のプリンと長ネギ一本の入った袋の二つだ。)とあっきーを交互に見る。
「あれ!?何、知らねえの?はっはーん、あいつ美奈ちゃんには格好付けてんだな。ったくしょうがねえ奴だなぁ」
驚きながらも面白がって言うあっきーは、そのあとちょっと困った顔をして笑って教えてくれた。
「実はさ―――」
『ピンポンピンポンピポピポピンポーン!!!』
『うるさいぞ晃。俺は病人だ。そして大いに近所迷惑だ。』
インターホン越しに聴こえてくる尊大な声に鼻息荒く答える。
「私だけど!!」
『………帰れ。』
「なっ!?」
私が言い返そうとしたとき肩に乗っていたアルテミスが「美奈落ち着けって」と先に答えた。
「薬あるんですけどーいらないんだなー?」
『…………まってろ。』
おっそろしく低い声で返してきた賢人は漸くドアを開けてきた。
「俺は晃に頼んだはずなんだが。あいつも頼まれたことを途中で放棄するなんてどういうことだ。いいか美奈子、お前はその袋を置いたらすぐに帰れ。」
「あのー賢人?美奈もう入ってるぜ?」
「……」
私は靴を脱ぎながら、アルテミスのツッコミにも反応せずドアを開けたまま固まっている賢人を見て思う。
……重症だわ。これ。
リビングのテーブルにあっきーから預かった袋の中身を出していく。ソファーに座った賢人は珍しくぼんやりとその様子を見ていた。ベッドで寝てといくら言っても何故か意地でもそこを動かなかったから私もアルテミスも放置だ。
「ねえ賢人って甘いの苦手よね?」
「ああ。」
「じゃあこの大量のプリンは何?あっきーの悪ふざけ?」
「俺は風邪のときはそれしか体が受け付けない。」
「は!?」
大真面目にそう言ってのける恋人に目を丸くした後。プリンをたくさん食べる賢人を想像して大爆笑してしまう私。そしてアルテミス。
「病人を餌によくそれだけ笑ってくれるな。いいからさっさと寄越せ。」
「よこせって…っっっぷ、あははっプリンを?あはっっちょ、だめお腹痛いーーっ」
「本当に失礼な奴だなお前は。だから嫌だったんだお前に知られるのは。こうやって笑われて馬鹿にされるのが目に見えてたからな。」
「っく、あははごめんごめん!はいっどうぞ♪」
馬鹿にしてるわけじゃないわよ。ただ単純に、弱ってる賢人が可愛いなって思っただけ。
でも、そんな風に言ったらこのプライド男は仏頂面になるに違いないから今は言わないでおいた。
だから気を取り直すように隣に座った私は一つ開けたプリンをスプーンですくって賢人の口の前まで運んであげた。
「はい、あーん♪」
もちろん、当然何かしら温度の低いことを言って自分で食べ出すかと思っていたのに。
「ん。」
「へ!?」
信じられないことにものすごーく素直にそれを口で受ける恋人に今度は私が固まった。
コンタクトもメガネもしてないからかやっぱりぼんやりと私を見る目と、熱で少し汗ばんだ首筋から肌蹴た胸元まで見えて妙に体温が上がる。
「あ、あははは!やっぱあんた相当具合悪いのね!しょうがないから長ネギうどんでも愛の女神様が作ってあげるから待ってなさいよっ!」
足元で私の発言にひっと青ざめるオス猫を従えてキッチンに向かおうとしたら。
「待て。」
くんっと腕を引かれて呼び止められる。
「ネギは別の用途で使うから調理しないでくれ。それに俺は途中で放棄する奴は嫌いだ。」
「な、なにいって…」
「早くしろ。」
そうやってどこか切実に灰色の瞳に請われたら…拒めない。
このバカ賢人っ!なによ甘えちゃって!!
要するに最後までプリンを食わせろってことじゃない!嬉しいからいーけど!!
「もう!ど・う・ぞ!」
ソファーに座り直してプリンをすくったスプーンを持つ。そしたら彼の口が思ったよりも高い位置に来た、と思った瞬間。
額に触れた。
「な…っなん…っっ」
赤面する私にお構いなしに「ほらはやく食わせろ」とスプーンを持った手を促して不遜に、どこか嬉しそうに言う賢人。
こいつ…っ開き直りやがりましたわね…っっ
そんな中やれやれって顔をして帰っていくアルテミスの後姿が恋人の肩越しに見えて、かーなーり気恥ずかしくもなるけれど、咳払いを一つしてから可愛いプリンと本当に全っ然可愛くない恋人と、こんちきしょうと向き合った。
