それでも、私はエンディミオンに会って、彼の顔を見てさよならを告げる為の勇気をどうしても持てなかった。

会ってしまったら


顔を見てしまったら




込み上げる想いを制御できなくて、その腕にしがみ付いて、その胸に顔を埋めて…泣き縋ってしまうに違いないと。思ってしまったから。

いつも私を待っていてくれる彼。私がゲートから降り立つと、まるで小さな子供のように頬を高潮させてまっすぐに駆けて来て。その長くて逞しい腕を広げて、私のことを苦しいくらいに抱き締めてくれる、彼。

そんな風にされたら、私はきっと迷いを捨てることなんてできない。

ただ彼に愛されたい、そして彼を愛する一人の女になってしまうから……

だからヴィーナスに贈り物を託して、彼へのお別れを代わりに行って来てもらってしまった。

私は、臆病で、ずるい。







そして今私は、押し花の本を持ち、断ち切れない思いを断ち切るための決意をしておそらくきっと最後になるだろう地球へ繋がるゲートの前に立っていた。

いつまでも逃げていては迷いを捨てることなんてできない。ただ一人の家族が安心して逝ける様に…私は…

少女から、大人にならなくてはならない時。それがきっと今。


だから私は



大好きなあなたと、さよならするの



光るゲートに祈るような気持ちで一歩踏み出す。





私はまだ知らなかった。

私のあの時の弱さが、彼をずっと重く、苦しめることになっていたなんて。あの時、私がちゃんと彼に会いに行ってお別れすることができていたらきっと…



あんな風に彼を変えてしまうことも無かったはずなのに――――




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