7
俺達はゲートの前まで共に辿り着くと、明るい陽の下で見つめ合っていた。
先刻。昨日の口上通り再びあの部屋に訪れたクンツァイトに、今度は本当の笑みでもう一度『俺はもう大丈夫だ』と、伝えた。
すると彼は瞳をきらりと潤ませて、『私達四天王はいかなるときもマスターのことをお側でお守りいたします。』と。そんな彼の言葉に四天王たちの変わらぬ気持ちに触れた気がして鼻の奥がつんと痛くなった。
そしてクンツァイトはセレニティの前で跪く。
『マスターを生来のお心へ戻してくださり…ありがとうございます。』と、声を震わせて言ったのだった。
「セレニティ、この贈り物はやはり君に返すよ。」
そう言って、ずっと中身を見ていなかったそれを差し出すとセレニティは少しだけ泣きそうになった。
「違うんだ。そういう意味じゃないよ。俺は…この贈り物が無くても、君の真心をちゃんと受け取ったから。形無いものでも、ずっとそれが支えになって信じていけると…思ったから。」
「エンディミオン…」
「夜空を見上げれば月がある。いつも白く輝く美しい月が。それだけで…いい。」
満月の時には君の笑顔を
三日月の時には君の涙を
新月の時には君の心を
月の影まで抱き締めて、君の事をここでいつまでも見守っているから。
そう告げるとセレニティは泣いて何度も頷いて、差し出したものを震える手で受け取った。
「月から見ると、この星は青い水晶玉みたいだって、いつか言っていたね。
俺はこの星がそんな美しい姿でいつもあれるように、ずっと守っていく。もう…逃げないよ。」
「エンディミオン、約束するわ。私もずっとこの星を照らしていけるように月の王国を守っていくって。」
俺の言葉にもう一度頷いてから、瞳に強さを取り戻して涙を拭うと、彼女は誓いを立てるように凛とした声で言った。
俺も微笑んで頷き、涙が零れる前に目の前の彼女を抱き締めた。
近くて遠い距離だけど
月と地球を二人で守っていこう
ずっと、二人で
「いつか」
最後の抱擁の中、彼女が涙声で言葉を紡ぐ。
「いつか私達が星の主としての力から解放されたら…そしたら…一緒になれるかしら…?」
「なれるよ、きっと。」
最後に重ねた唇は、また会う日の為の誓いのキス。使命を全うして、生を閉じて、再び巡り会えるその日々へ。
迎えに来たヴィーナスは、セレニティを抱き締めて泣いていた。俺はそんな彼女に最愛の人を託す。何か一言二言添えた気がするけれど、セレニティとの今生の別れがもう目の前に迫っていて何一つ上手く伝えられなかったと思う。
そうして俺達は別れた。
さよならは言わずに――――
