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「エンディミオン…この部屋は…」
何も言わない彼女の手を引いてやってきた城の離れにある塔の一番上にある、今は誰も使わないその部屋に入ると困惑したように俺に尋ねてきた。
「何も心配することは無いよ。君は今日からここに暮らすんだから。」
「…え…っ?」
嬉しくて言葉に出来ない?そうだよね。俺も、漸く君がここに来てくれて嬉しくてたまらないのだから。
「君が地球に戻ってきてくれたときの為にずっと準備していたんだよ?」
君の為にあつらえた様々な家具、ドレス。それらを眺めて、漸くこの部屋の主の到着にどれもが喜んでいるように思え、一際輝いて見えた。
「でも…」
「何?足りないものでもある?何でも言ってくれ。君のためなら俺は何でもするよ。」
「エンディミオン、私…」
俺に近寄り語り掛ける彼女。それすらも酷く扇情的に思えて、自分の問いかけたことも忘れてその腕を強く引き、深く口付けを落とした。
「待って…っエンディミオ…んんっっ」
何日ぶりなのだろう。彼女との口付けは。
漸く彼女の温もりに触れられた気がして安堵する。
肌だけではあれほど冷たいと思っていた彼女の温度は、こうして口付けをし、舌を絡ませればそれを忘れるくらい熱くて。俺の心をどうしようもないほど歓喜させる。
なんだ。やっぱり君も俺と同じ気持ちだったんじゃないか。もう無理することなんてないよ。
一生君の傍にいてあげる。
君を囲うもの一切から、俺が救い出してあげるんだ。
もつれるままにベッドに横たえた彼女を見下ろすと、真珠のような涙を美しく流していた。
そんな彼女の頬を撫で、その雫を唇で拭う。
「綺麗だ。セレニティ。泣くほどうれしかった?もう、俺から離れてはだめだよ。」
「…めて…」
彼女の甘い香りを深く吸い込むように抱き締めて、その体に手を這わす。
「君を奪おうとする全てのものから、俺が守ってあげる。もう、不安になることなんてないからね?」
震える彼女の体を暖めようと、白い肌に唇を落としていく。
「や…めて…」
一向に収まらない震え。
聞こえてきた言葉も全て受け流して彼女を愛していく。けれど。
「やめてーーーーっ!!」
彼女から聞く初めての叫び声に目を見開き体を起こす。
え?それは、どういう意味?
どうして君を愛でるこの行為を中断させるの?
分からないわからない
「ごめんなさいエンディミオン…っ私、もう貴方と一緒にいることができないの!!もう、会えないの…!!」
何を言っているのか分からないよセレニティ。
だってもう君は俺と一緒にいるじゃないか。戻ってきてくれたじゃないか。そうだろう?
「お別れを言いに来たのっ貴方とさよならするために私は…っ!?」
彼女はそこまで言って俺の事を見ると黙った。
青ざめて、唇を震わせて。
「お別れ…?俺と?違うだろセレニティ。君がお別れするのは外との世界だよ。」
「エ…エンディミ…」
「これからは俺と君の二人だけの毎日をここで過ごすんだ。もう、誰にも邪魔させないこの場所でね。」
それでも首を振り続ける彼女。
どうして?何で?ああ、そうか。
「突然この部屋を見せられて混乱したんだね。ごめんね。でもこれで、俺達の愛は、俺達だけのもの。ずっとここで永遠に守っていけるんだ。だからもう迷うことなんて無いんだよ。」
それなのにまだ涙を流すのをやめない彼女に分かってもらうために両手を布で縛ってベッドの柵に括りつけた。
「ほら、これで安心だろ?」
これでもう迷わずに、この部屋で過ごすことが出来るよね?
俺は漸く何日振りに笑顔を取り戻して、最愛の人に囁いた。
