3 冷静と情熱の間

クンツァイトは身を包む暗黒パワーを膨張させ、その掌に集中させる。

守護戦士たちは、目の前で繰り広げられようとしていることが未だに信じられず、ただそこに立ち尽くしていた。

「我がダークパワー、受けてみよ!!」



凄まじい攻撃はうねるようにヴィーナス達に向かい、容赦なく降り注いでいった。

四戦士は叫び、その圧倒的な力に吹き飛ばされる。

残る三人も次々と攻撃を仕掛けてくるが、彼女たちは受けるばかりで反撃はしなかった。
いや、できなかった。




愛を語り合うことは無くても、それでも互いに心を通わせていたと感じていた相手を手に掛けることなど…できなかったのだ。


口の中は切れ、鉄の味がして、そんな訳はないのにそれが胸の中に広がったように苦々しい気持ちになる。体のあちこちが痛むが、それでも一歩ずつ四天王に向かっていく。
諦めず、彼らの心を取り戻そうと―――




「どうした月の守護戦士たちよ。そんなに弱腰ではその命、すぐに頂くぞ?」

「もうやめて!!」


マーズは自分にいつも真っ白なカサブランカを太陽のような笑顔で贈ってくれたジェダイトに言う。
けれどその表情は暗黒の影を落としたまま動かない。


「ネフライト…目え覚ませよ…な…?」

ジュピターは自分よりもずっと背の高い、その大きな腕でいつも包んでくれた彼に近付く。
例え今はその腕に暗黒の剣を持っていようとも。


「貴方と戦うなんて…できません…!」

マーキュリーはいつも嫌みばかり言っていたけれど、時折見せる優しい瞳を自分に向けてくれていたゾイサイトのことをじっと見詰める。
しなやかに鍵盤の上を動くその細くて長い指は、自分を攻撃するために構えられていた。



「お願いよ…クンツァイト!!」

似た者同士だと微笑み合ったあの日。髪を梳くように触れられたその大きく温かな手を思い出し、手を差し伸べる。ヴィーナスの頬には涙が伝っていた。

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