1 籠の鳥
――助けて!!――
「セレニティ!?」
彼の耳には確かに愛する彼女の心の声が聞こえていた。
王子エンディミオンはただ一人、敵に惑わされずに兵士達に戦いを止める様に諭していた為に動きを乱す不穏分子とされ、地下牢に幽閉されていた。
「なんという事だ…こんな時、父上が生きていて下されば、皆を止める事が出来たのだろうか…。この王国を統治する者として民を正しい道に導く事も出来ない。俺は何て無力なんだ…。」
王子は苦渋に満ちた顔でひとりごちる。
セレニティ…
セレニティ…!
君は今無事なのだろうか?
さっきの声は確かに君のもの
君を、君の王国を助けに行きたいのに…!!
エンディミオンはその拳で思い切り重く分厚い壁を叩き付けた。
そこには悔しさ、怒り、情けなさ…恋慕。
全ての気持ちが込められていた。
しかし何の変化も生み出さないその行為に自嘲するように笑みを浮かべ、無力感のままにフラフラとしゃがみ込むのだった。苦悩に歪んだ顔を震える手で覆って。
どのくらいそうしていただろうか。突然、ふわりと頭を撫でられる感覚に驚き目を開ける。
『エンディミオン』
そこには悲しむような慈しむような表情をした、懐かしい母の姿があった。
「母…上?まさか…??」
母はエンディミオンが幼い頃に不治の病で世を去っていた。
有り得ない出来事にエンディミオンは困惑の色を隠せない。
『エンディミオン、月へ往きなさい。
貴方にはまだやるべきこと、そして貴方にしか出来ないことがあるわ』
「俺にしかできない…?」
『戦いなさい』
ゆっくりと頷いた母が続けて言ったその言葉にエンディミオンはハッとする。
「月の民と戦えと…?母上までそのようなことを仰るのですか!?」
『いいえ。戦えというのは貴方の今のある、その強い信念を貫き通せということです。
それが地球国の王子として貴方のやるべき責務だと、あなたは思いませんか?あの邪な者に操られてしまった憐れな者達に最後まで諭すのです。
それが王家としての最後の役割。どうか誇りを持って戦って。』
「母上…」
母は優しく微笑む。昔と一つも変わらない、エンディミオンが一番好きだった母の表情。
それは、どこか月の王女と似ていた。
『そしてエンディミオン。貴方の愛する女性を救ってあげて』
彼女はエンディミオンと同じ深い蒼い瞳を真っ直ぐに向けた。そして愛する息子をそっと両手で包み込む。
忘れかけていた母の温もりにエンディミオンは自然と透明なものが瞳に溢れてきた。
『王族や身分など関係なく、一人の男として、彼女を守り抜きなさい。
これは貴方にしか出来ないことよ』
「セレニティ!?」
彼の耳には確かに愛する彼女の心の声が聞こえていた。
王子エンディミオンはただ一人、敵に惑わされずに兵士達に戦いを止める様に諭していた為に動きを乱す不穏分子とされ、地下牢に幽閉されていた。
「なんという事だ…こんな時、父上が生きていて下されば、皆を止める事が出来たのだろうか…。この王国を統治する者として民を正しい道に導く事も出来ない。俺は何て無力なんだ…。」
王子は苦渋に満ちた顔でひとりごちる。
セレニティ…
セレニティ…!
君は今無事なのだろうか?
さっきの声は確かに君のもの
君を、君の王国を助けに行きたいのに…!!
エンディミオンはその拳で思い切り重く分厚い壁を叩き付けた。
そこには悔しさ、怒り、情けなさ…恋慕。
全ての気持ちが込められていた。
しかし何の変化も生み出さないその行為に自嘲するように笑みを浮かべ、無力感のままにフラフラとしゃがみ込むのだった。苦悩に歪んだ顔を震える手で覆って。
どのくらいそうしていただろうか。突然、ふわりと頭を撫でられる感覚に驚き目を開ける。
『エンディミオン』
そこには悲しむような慈しむような表情をした、懐かしい母の姿があった。
「母…上?まさか…??」
母はエンディミオンが幼い頃に不治の病で世を去っていた。
有り得ない出来事にエンディミオンは困惑の色を隠せない。
『エンディミオン、月へ往きなさい。
貴方にはまだやるべきこと、そして貴方にしか出来ないことがあるわ』
「俺にしかできない…?」
『戦いなさい』
ゆっくりと頷いた母が続けて言ったその言葉にエンディミオンはハッとする。
「月の民と戦えと…?母上までそのようなことを仰るのですか!?」
『いいえ。戦えというのは貴方の今のある、その強い信念を貫き通せということです。
それが地球国の王子として貴方のやるべき責務だと、あなたは思いませんか?あの邪な者に操られてしまった憐れな者達に最後まで諭すのです。
それが王家としての最後の役割。どうか誇りを持って戦って。』
「母上…」
母は優しく微笑む。昔と一つも変わらない、エンディミオンが一番好きだった母の表情。
それは、どこか月の王女と似ていた。
『そしてエンディミオン。貴方の愛する女性を救ってあげて』
彼女はエンディミオンと同じ深い蒼い瞳を真っ直ぐに向けた。そして愛する息子をそっと両手で包み込む。
忘れかけていた母の温もりにエンディミオンは自然と透明なものが瞳に溢れてきた。
『王族や身分など関係なく、一人の男として、彼女を守り抜きなさい。
これは貴方にしか出来ないことよ』
