7 愛と哀を抱き込んで

その微笑みは、私が体調を崩し、しばらく王宮に出ることを控えていた時に見たもの――――

あなたは王子という身分でありながら、私のところに見舞いに来てくれた。




「ベリル?体の具合はどうだ。まだ辛いのか?」

「エンディミオン様!?わざわざこのような場所においでになるなんて…恐縮にございます。」

私は咳き込みながらも慌てて頭を下げる。

「このような見苦しい姿で申し訳ございません…!」

「そんなにかしこまらないでくれ。楽にしていろ。ベリルとは、四天王同様、幼い頃からずっと共に過ごしてきた…。家族同然なのだから。」

「家…族…。」

本来ならば、王子からそのような事を言われたら勿体なくも、喜ばしい気持ちになるところだ。

でも、いつからか兄弟のように思っていた彼が、自分の中で特別な存在となってしまった今、それは心にチクリと痛みを与える響きだった…。


それでも


「そう。家族だよ。ベリルは俺にとって大切な存在の一人だ。だから早く良くなってくれ。大切な人が辛いのは、俺も辛いのだから。」



そう…。貴方は私にそう言ってくれた…。


フワリと辺りを包むような笑みを浮かべた貴方の心は、どこまでも強くて…限りなく優しい。

私はそんな貴方が大好きだった。



愛していたの――――






ベリルの両目からは涙が止めどなく溢れ出していた。



「私は…何と愚かな…エンディミオン様…!!」



カラー…ン



ベリルは持っていたロッドを力無く落とし、そのままガクリと膝を付き地面に手を付いた。



肩を震わせている彼女を見て、守護戦士たちは思った。
四天王を敵として自分たちの前に現れた時の、邪悪で禍々しいオーラをまとっていた彼女の面影は最早もうない。


代わりにここにいるのは、一途に一人の男性を愛している純粋な心で涙を流す女性だった。


魔導師としての強大な力をメタリアに利用され、純粋に人を愛する気持ちを憎しみに変えられた哀れな女性―――――



今はもう彼女には何の憎しみも恐怖もない。


ただただ、目の前にいるメタリアが許せなかった。



「さぁベリル。こっちに来るんだ。」

クンツァイトが差し伸べた手にベリルの手が触れようとしたその時だった。



衝撃音と、震動が起こり、ベリルの悲鳴が上がったのは―――――


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