7 愛と哀を抱き込んで
『王子と王女をどこに隠した!?』
メタリアはベリルを介して問う。
「ベリル!王宮抱えの優れた魔導師が、なぜその悪魔に身を売り渡したのだ!!我らが王子を滅ぼそうとする者の言いなりになぜなるのだ…!?」
ジェダイトは姉のように慕っていたかつての心優しかった彼女を思い出し、やりきれぬ思いで叫んだ。
「王子を滅ぼすことなどあるものか!メタリア様は約束して下さったのだ。エンディミオン王子と私が、手を取り合って再編していく世界を!!」
「!?」
「誰にも…誰にも言っていなかった私の気持ちを汲み取って下さった!だから邪魔な月の王女を月もろとも滅ぼすことも辞さない!!」
「ベリルが…マスターを…?」
ジェダイトは驚いていたが、ネフライトは冷静に彼女に近付きしっかりと目を合わす。
「俺は知ってたぞ。アンタがマスターを好きなんだってこと。」
「何だと?」
ベリルは片眉を上げてネフライトを見やる。
彼の後ろではジュピターが神経を張り詰めながら攻撃体制で援護していた。
「お前ごときに何が分かる!!」
「ああ。分からなかったさ。昔の俺ならな。けど、人を本気で好きになった今の俺なら…分かるぜ?」
そう言い、ジュピターのことを優しく見つめる。
ジュピターの頬は、たちまち朱色に染まった。
「これ以上バカなことはやめたら?マスターが愛しているものを滅ぼして、喜ばれると思う?」
ゾイサイトが溜め息混じりに言う。
「バカだと!?」
「そう。バカだ。大バカだよ!本気で好きなら、マスターの幸せを一番に願うんじゃないの?」
マーキュリーはいつものように相手を逆撫でするような彼の物言いにハラハラしながら見守っていた。
「…黙れ…!!」
「ベリル。愛は奪うものではない。共に育むものだ。今ならまだ間に合う。メタリアの手から離れて我々と共にマスターをお守りしよう。」
クンツァイトは右手はしっかりとヴィーナスの手を握り、左手をベリルに差し出した。
ベリルは明らかに困惑の色を現し始める。
「う…黙れ黙れ!!私…は…!!」
頭を抱えて彼女の中にある暗黒パワーと格闘しているようだった。
そして彼女の中の僅かに残る温かな部分から、ふと、いつかの王子の柔らかい微笑みが広がった――――
