7 愛と哀を抱き込んで

月の王国は、そのシンボルであるムーンキャッスルも原形をとどめないほど崩壊していて、命の灯火が恐ろしい速さで消えていった。

月の民も、地球の民も…。

幸福と笑顔と明るさに包まれていた世界は、暗黒に姿を変えようとしていたのだった。

それでも四天王と守護戦士は信じていた。主が紡ぎ出す未来を――――





第七話
『愛と哀を抱き込んで』






「手に怪我が無くて良かったです…。」

マーキュリーは右足から鮮血を流すゾイサイトに素早く止血処置をしながら言う。

「あなたもね。マーキュリー。」

弱々しく微笑んで彼女を見やる。

プリンセス、プリンスと別れた後、隠していた傷がマーキュリーにばれて少し決まりが悪そうだったが、介抱されるのは嫌ではないことに彼は気付いていた。


戦いでその手を血に染めても…

鍵盤を美しく流れる彼の指




カンバスを自由に滑る筆を持つ彼女の手




互いが、互いに大事にしているものを傷付けてしまわなくて良かった。

心の底からそう思っていた―――――





ほとんど焼け野原と化したこの地では、アイツを見付けるのは容易いことで。

同時にアイツがプリンセス達を見付けるのもそうであることが頭にある彼等は、少しでもそれが遅くなるようにメタリアの足止めをしようと、傷付いた自身を奮い立たせて歩を進めていった。



そして―――巨大な邪悪な存在の姿が8人の目の前に現れた。

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