1 籠の鳥

セレニティは首を何度も横に振り、涙を止めどなく零すともう一度大切な友の腕を掴んだ。

「嫌よ!ヴィーナス!最後だなんて…そんな事言わないで!!」

そう言ってそのままきつく抱き締める。


幼い頃からずっと一緒だった、大好きで大切な友達…。これで最後だなんて、そんなの絶対に嫌よ…!



「どうか…分かって下さい。これは私達守護戦士皆の願いなのです。プリンセス、どうかご無事で…!」

ヴィーナスはセレニティに向き直り、いつものように満面の笑みを浮かべた。これから動乱のさなかに飛び込んで行くとは思えないほどに。

しかし、彼女の次の行動により、戦いは現実に起こっているのだと嫌でも思い知らされる。

軍人らしく跪き、最敬礼のポーズを取ると、凛とした表情でよく響き渡る声で話し出す。


「プリンセス守護戦士リーダー兼シルバーミレニアム軍事指揮官セーラーヴィーナス。その任務遂行の為、行って参ります。」

そして立ち上がると疾風のようにセレニティの前から去り、二度と振り向く事もなく扉の向こう側へ消えてしまった。

「ヴィーナス…皆…!!」

重い扉が閉まる音が鳴り響いた後は、恐ろしい程の静寂が訪れる。

セレニティはがっくりとその場にしゃがみ込む。そして眼下に落ちる涙で染みていくドレスをにじんでいく視界の中、ぼんやりと見つめていた。



「私は…何もできないの?愛する国、大好きな皆の為に私は…ここで何もしないでいるしかないの…?まだ銀水晶を扱えることのできない私には……」



大切な人を守ることもできないの……?



教えて



エンディミオン…!!





地球の王子、エンディミオンのことはセレニティもヴィーナスも一言も口にしなかった。

ヴィーナスはあの反乱の中彼を見掛けなかった為、彼自身がどうなっているのか判断ができず、自分の口からは何とも言えなかったからだ。

セレニティはただ怖かった。エンディミオンのことを誰よりも愛していて、信じているのだが、もしも他の地球の民と同じ様にこの星を憎んで攻め滅ぼそうとしているのだとしたら…

もしもその様なことを事実として告げられてしまったら…

そう思うと怖くて怖くて仕方が無かったからだ。





これは、神の掟に背いた罰なの?

掟の事は頭では分かっていたわ

だけどあの人が愛しいと思う気持ちを、止めることができなかった…

何よりも自分の気持ちを優先してしまった私の我儘が全てを引き起こしてしまったの…?

「エンディミオン…」

声に出してもう一度彼の名を呼ぶ。

助けて…足が震えて動かないの



お願い…今すぐ抱き締めて…

私をこのどうしようもない孤独から救い出して…!


「エンディミオン…!!」




愛する



たった一人の共犯者

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