番外編 『レモンと蜂蜜』
まだ図書室に誰かいるのに、まもちゃんはキスをやめてくれない。ドキドキして心臓が痛いくらいなのに、胸の中が甘いもので満たされていく。
私は腰をしっかり抱いてくれるまもちゃんの大きな手が好きだし、伏せられた長い睫毛も好きだし、大きな背中も好きで、まもちゃんとするキスが大好きだから、ふわふわ気持ちが良くて、どんどん力が抜けていくのが分かる。そんな中、やっとあの人たちは廊下へ出て行った。引き戸が閉まる音がしてほっとしたのも束の間。びっくりすることが起こった。
「うさ、口開けて」
「え? んぅ……っ!」
まもちゃんに言われて何か聞き返そうとしたら温かいものが私の口の中に入ってくる。舌先が当たるとそこからじんじん熱くなって、身体中に電気が走ったみたいにびりびりした。
な、なに? これ、こんなキス、知らない……っ!
まもちゃんは私のお団子を優しく撫でたり、頬を両手で包んだり、頭をぐっと支えたりしながら角度を変えて深いキスを繰り返してくる。
突然の甘くて苦しい衝撃に、立っているのもやっとで、私は必死にまもちゃんにしがみ付いた。
「はぁ……うさちゃん……」
甘い吐息。子供の頃みたいそう呼ぶ、全然子供じゃない事をしてくる幼なじみの掠れたその声をぼんやりと聞いた気がしたけれど。私の意識は、そのままふわっと身体の外側へ抜けてしまった。
「うさ!? すまん、大丈夫か?」
「え、えへへへ、息するの、忘れてたよ……」
立ち眩んだ私をしっかり抱きとめてくれたまもちゃんは、ほっとしたように眉を下げて微笑んだ。
「じゃあ、練習だな」
「へ?」
「早くこのキスにも慣れてくれ」
「む、無理だもん!」
頭をポンポン撫でてとんでもない事を言ってくる恋人に恥ずかしさのあまり大きな声で言い返してしまう。
「ははっごめん」
「もう!」
「嫌だった?」
「や、じゃ、ないけど」
「うん、分かってるよ。ゆっくりな」
そう優しく言ったまもちゃんに抱きしめられると、彼の心音が私と同じくらい早い事に気付いてようやく安心した。
「俺は、うさだけのものだよ。俺がこんなキスをするのもうさだけ。だから、何も心配すんな」
「うん……分かった」
へへへっと笑いながらきゅっと抱き付くと、まもちゃんも嬉しそうに笑ってくれる。
「その代わり……」
「え?」
真剣な声に見上げると、吸い込まれそうな蒼い瞳とぶつかって、私の心臓がトクトク鳴り響く。
「うさも、俺だけのうさだからな?」
「あ……」
「誰にもあげない」
にっと意地悪く笑う彼が、憎らしいほどカッコよくて、私は何が悔しいのか分からないけれどまもちゃんの胸をポカポカ叩いていた。
「こら、いたたっうさ〜」
手首を掴まれてきゃーっと笑いながら悲鳴を上げると、離した手でくいっと顎を持ち上げられてキス。しかも、さっきみたいな深いキスで、私の体温は再び急上昇した。
「んーっ! も、もう! ゆっくりって言った!」
唇が離れてから意地悪な幼なじみにコーギすると、触れるだけのキスをもう一度だけしてきてにっこり笑われる。
何それ! ずるい!
「続きは俺の家でする?」
「しません!」
冗談とも本気とも取れる爆弾発言に、真っ赤な顔してそう答えるのが精一杯だった。
おわり
2022.1.19
私は腰をしっかり抱いてくれるまもちゃんの大きな手が好きだし、伏せられた長い睫毛も好きだし、大きな背中も好きで、まもちゃんとするキスが大好きだから、ふわふわ気持ちが良くて、どんどん力が抜けていくのが分かる。そんな中、やっとあの人たちは廊下へ出て行った。引き戸が閉まる音がしてほっとしたのも束の間。びっくりすることが起こった。
「うさ、口開けて」
「え? んぅ……っ!」
まもちゃんに言われて何か聞き返そうとしたら温かいものが私の口の中に入ってくる。舌先が当たるとそこからじんじん熱くなって、身体中に電気が走ったみたいにびりびりした。
な、なに? これ、こんなキス、知らない……っ!
まもちゃんは私のお団子を優しく撫でたり、頬を両手で包んだり、頭をぐっと支えたりしながら角度を変えて深いキスを繰り返してくる。
突然の甘くて苦しい衝撃に、立っているのもやっとで、私は必死にまもちゃんにしがみ付いた。
「はぁ……うさちゃん……」
甘い吐息。子供の頃みたいそう呼ぶ、全然子供じゃない事をしてくる幼なじみの掠れたその声をぼんやりと聞いた気がしたけれど。私の意識は、そのままふわっと身体の外側へ抜けてしまった。
「うさ!? すまん、大丈夫か?」
「え、えへへへ、息するの、忘れてたよ……」
立ち眩んだ私をしっかり抱きとめてくれたまもちゃんは、ほっとしたように眉を下げて微笑んだ。
「じゃあ、練習だな」
「へ?」
「早くこのキスにも慣れてくれ」
「む、無理だもん!」
頭をポンポン撫でてとんでもない事を言ってくる恋人に恥ずかしさのあまり大きな声で言い返してしまう。
「ははっごめん」
「もう!」
「嫌だった?」
「や、じゃ、ないけど」
「うん、分かってるよ。ゆっくりな」
そう優しく言ったまもちゃんに抱きしめられると、彼の心音が私と同じくらい早い事に気付いてようやく安心した。
「俺は、うさだけのものだよ。俺がこんなキスをするのもうさだけ。だから、何も心配すんな」
「うん……分かった」
へへへっと笑いながらきゅっと抱き付くと、まもちゃんも嬉しそうに笑ってくれる。
「その代わり……」
「え?」
真剣な声に見上げると、吸い込まれそうな蒼い瞳とぶつかって、私の心臓がトクトク鳴り響く。
「うさも、俺だけのうさだからな?」
「あ……」
「誰にもあげない」
にっと意地悪く笑う彼が、憎らしいほどカッコよくて、私は何が悔しいのか分からないけれどまもちゃんの胸をポカポカ叩いていた。
「こら、いたたっうさ〜」
手首を掴まれてきゃーっと笑いながら悲鳴を上げると、離した手でくいっと顎を持ち上げられてキス。しかも、さっきみたいな深いキスで、私の体温は再び急上昇した。
「んーっ! も、もう! ゆっくりって言った!」
唇が離れてから意地悪な幼なじみにコーギすると、触れるだけのキスをもう一度だけしてきてにっこり笑われる。
何それ! ずるい!
「続きは俺の家でする?」
「しません!」
冗談とも本気とも取れる爆弾発言に、真っ赤な顔してそう答えるのが精一杯だった。
おわり
2022.1.19