第七話 『心が向かう場所』

地場センパイの呼ぶ声が、大切だった男の子と重なって聞こえた。

思い出した

思い出した

なんであんなに大好きだったはずの男の子の事を忘れてしまおうとしていたの?


「....っっただいま!!」

「お帰りなさい。どうしたの?そんなに慌てて。」

息を切らして帰ってきた私に目を丸くしてエプロン姿のママがキッチンから顔を出した。

「ママ!教えて欲しい事があるの!!」

「?」



午後の授業の内容は何一つ頭に入ってこなかった。テスト間近なのに!

図書館でのキスと、

ーーうさちゃんーー

あの声で頭の中が一杯だったから。

ファーストキスの衝撃はあの呼び方ひとつで吹っ飛んでしまった。
もちろん、く、く、くちびるのっ!かか感触ははっきり残っているけれど!そーゆーことじゃない。

地場センパイ。あなたは....!


記憶を頼りにママに聞き始める。いつものように胸が苦しくなるけれど、今はそれよりも知らなくちゃいけないことがあるから。

「この家に引っ越してくる前....そう!進悟が産まれるくらいのころに、私よく男の子と一緒に遊んでなかった??」

「え?ええ。遊んでたわよ?」

さらっと答えるママに飛びついた。

「その子!その男の子の名前!!教えてママ!!」

やっぱりあの男の子は本当にいたんだ。落ち着いた声、優しい手。いつも一緒にいてくれた大好きな男の子。


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