第四話 『ブラック生徒会』
放課後、生徒会室に顔を出した会計の俺、紅蓮灼矢はカイチョ―からのただならぬ空気に気圧されるも反対側の角の位置に腰掛けた。
やがてカイチョーは重々しく口を開いた。
「うさぎに想いを告げた。」
「ほう。で?返事は?」
生徒会室でカイチョーに俺は机に乗り上げた自分の足先を見つつ聞く。カイチョーの横の蒼い男がすっげえ殺気立っているが、そんなこじらせブラコン副カイチョーは放っておくに限る。
「こ…」
「こ?」
「断られた!!うさぎ、なぜなんだあああああっっ!!!!!」
これは駄目だ。駄目なやつだ。
キャラが崩壊なんてレベルじゃねえ。何のつもりだよその無意味なオーバーアクションに応援団並みの馬鹿でかい声は。
わざわざ立ち上がって拳を作った両腕を高く振り上げて叩き付けた机の衝撃の余波はみしみしこっちまで伝わってきてるんだよ。頼みますカイチョ―やめてください。
「あの馬鹿女…コロス…結局あいつはそういう女なんだ....」
って、蒼影も別の意味で崩壊してるな。ぶつぶつ呪詛唱えてやがる。
あーホントこんな生徒会辞めてえ!心の底から!
今更ながらあの時こいつらに弱み握られたのがまじで痛い。
なんでよりにもよってガキの頃母親に女の恰好着せ替えられてた写真を見られちまったんだ。うぜえまじくそばばあ!イケメンなお友達だったから特別にみせてあげたのよ~♡じゃねえ!!ダチじゃねえし、その時カイチョ―がクラス委員だったからってプリント届けに来ただけだっつーの!腰巾着な弟も一緒にな!
誰かどーにかしてくれこのブラック企業ならぬブラック生徒会を。
最悪舎弟の女四人に頼むかと思っていた矢先。突如ドアが開いてドギツイ香水の匂いを撒き散らせた我が生徒会のケバすぎる書記が現れた。
「遅れましたわ~!申し訳ありません光輝様っ今日は朝から化粧ののりが悪くて、とてもあなた様にお見せ出来る顔じゃなかったのですわよおオ~ッホホホ~ッ!
でも安心してくださいまし。どんなにお化粧ののりがイマイチでもわたくしの心はいつでもあなた様だけのも・の・で・す・か・r
「騒々しいぞ翠子!!」
「あらいやだわ…怒ったお顔もステキ…」
「お前は本当に、百回死んできたらどうだ?」
蒼影はカイチョーを見上げるバブリーな女の前に立ち塞がり鼻を摘まみながら睨んで言い放つが、本日も全くもって効果が無い。
「光輝様!あんな小娘はおやめになったほうがご自分のためですわ!今日だってあの小娘、地場とかいうこの学校で光輝様に次いでハンサムとくっちゃべっていましたもの!その点わたくしはあなた様一筋ですからどうぞご安心を♪♪ホホホホホ、ホ、ホ、ホ…?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ふん、厚塗り馬鹿女め。また地雷踏んだな。
「さてとカイチョー、俺は見回り行って来るぜ。」
ひょいと足を下ろすと爆発寸前、処刑執行前の冷え切った沈黙を携えたしこたま面倒くさい連中を尻目に生徒会室を出る。
数歩歩いたところで何かの破壊音が響いたが、表情筋が機能しないままスマホで舎弟①唐子に「とりあえずやばいすぐたすけて」と緊急のメッセージをしたため、さながら脱獄犯の如く走り去った。