第三話 『黒魔王と王子』
「うさぎ」
「あ、ひーちゃん!」
「探したぞ。こっちの図書室に用があったのか?」
すっと視線を私の後ろに向ける幼馴染に慌てる。
「え!?えっとー…」
私が返事に困っていると、地場センパイは無言で立ち上がり去ろうとする。またあの、誰に対しても無関心という顔にすっかり戻っていた。
あれ、でも無関心なはずなのにちゃんと勉強見てくれたのよね…しかも分かりやすく。なんで?
もしかして…ちょっとはいい奴??
だったらひーちゃんとも仲良しになればもっとこのヒトも学校が楽しくなるかも!ひーちゃんはちょっとアレだけど面白いしいざという時は頼れるし。
そう思った私は去ろうとする彼の腕を引っ張ってにっこり幼馴染に微笑んだ。
「このヒトに勉強教えてもらってただけだよ。ひーちゃん知ってる?二学年の地場衛センパイ!」
あ、ら…?
何かしら、何だか…空気が…
「勉強なら俺が見てやると言ったじゃないか。」
「でもひーちゃんは生徒会で忙しいから…「良かったな、明日からは幼馴染に見てもらえよ。」
地場センパイは私の手を払うようにすり抜けると冷たい声で言って歩いていってしまう。
何で。やだ…今度は胸がずきずき痛いよ…っ
「待って!」
「うさぎ、あの男とは関わらない方がいい。」
「ひーちゃん?」
「今にも泣きそうな顔をしているぞ。あの男と関わった女子は碌なことが無いと聞いている。」
「私、泣いたりなんか…っそれにあのヒトそんなに悪い奴じゃないよ…っ」
別にあのヒトに嫌なことをされたり傷付けられたりしたわけじゃないの。
でもじゃあどうして私は泣きそうになってるの…?
何も言わずに廊下に飛び出す。だけど、もう彼の姿はどこにもなかった。
―置いていかれた―
ヤダヨ マッテ オイテイカナイデ…!!
――え……?
何か、心の奥深いところで小さな私が叫んでる。
これは…昔のキオク……?
「うさぎ!!」
涙が勝手に溢れて。それを見たひーちゃんは眉間に皺を寄せた。そして私の涙を拭って言った。
「うさぎ、俺はお前が好きだ。」
「私も、すき、だよ…?だって、大事な幼馴染だもん…」
「そんな風に言わなくていい。分かってるだろう?女としてうさぎのことが好きだ。」
「え?」
「俺は一生、おまえだけだと決めている。俺と付き合え。うさぎ。」
「…!!」
女として?一生…?
人通りの多い廊下でひーちゃんの言葉だけが、真っ直ぐに私のところに飛び込んできた。
あいつの気配は、いくら辿ってもどこにもなくて。幼馴染の突然の言葉も重なって。
私の胸の中は今までで一番ざわざわと大きく波打っていた。
こんなに怖いくらい真剣な顔をしたひーちゃんを見るのは初めてだった。
本気…なんだ。ひーちゃんは私の事を本気で思ってくれていることがよく分かった。ごめんね今までちっとも気付かなくて。
だから私もちゃんと本当の気持ちを話さなきゃ。
「ごめん。私ひーちゃんのこと、そんな風に考えた事が無くて…でもね、」
「だったら今から考えてみればいい。」
「ひーちゃん!私、」
「まさかとは思うがあのふざけた男を――
「…!」
私の事を見て何かに気付いたような幼馴染は怖い顔をして両肩を掴んできた。
「そうなのか!?あんな突然現れてたかだか数日しか会ってもいない男に、幼い頃からずっと傍にいた俺が負けたとでもいうのか!?」
「そうじゃない!そうじゃない…けど、ひーちゃんのことはやっぱり幼馴染としか考えられない…!!」
「うさぎ…」
肩の手が力なく離れる。
「ごめん…」
私が泣きそうになるのはおかしいと思う。でも、大事な幼馴染を傷つけていることが彼の表情を見たら痛いほど伝わってきて…謝る声も震えてしまった。
「ごめんね…ひーちゃん。」
それでも私にはそれしか言えない。予鈴を合図に、ひーちゃんのことをこれ以上は見れずに駆け出した。
「認めん…っ俺は認めんぞ!うさぎのことを一番よく分かってるのは俺だ…!」
苦しそうに叫ぶ彼の声を背に。
つづく
「あ、ひーちゃん!」
「探したぞ。こっちの図書室に用があったのか?」
すっと視線を私の後ろに向ける幼馴染に慌てる。
「え!?えっとー…」
私が返事に困っていると、地場センパイは無言で立ち上がり去ろうとする。またあの、誰に対しても無関心という顔にすっかり戻っていた。
あれ、でも無関心なはずなのにちゃんと勉強見てくれたのよね…しかも分かりやすく。なんで?
もしかして…ちょっとはいい奴??
だったらひーちゃんとも仲良しになればもっとこのヒトも学校が楽しくなるかも!ひーちゃんはちょっとアレだけど面白いしいざという時は頼れるし。
そう思った私は去ろうとする彼の腕を引っ張ってにっこり幼馴染に微笑んだ。
「このヒトに勉強教えてもらってただけだよ。ひーちゃん知ってる?二学年の地場衛センパイ!」
あ、ら…?
何かしら、何だか…空気が…
「勉強なら俺が見てやると言ったじゃないか。」
「でもひーちゃんは生徒会で忙しいから…「良かったな、明日からは幼馴染に見てもらえよ。」
地場センパイは私の手を払うようにすり抜けると冷たい声で言って歩いていってしまう。
何で。やだ…今度は胸がずきずき痛いよ…っ
「待って!」
「うさぎ、あの男とは関わらない方がいい。」
「ひーちゃん?」
「今にも泣きそうな顔をしているぞ。あの男と関わった女子は碌なことが無いと聞いている。」
「私、泣いたりなんか…っそれにあのヒトそんなに悪い奴じゃないよ…っ」
別にあのヒトに嫌なことをされたり傷付けられたりしたわけじゃないの。
でもじゃあどうして私は泣きそうになってるの…?
何も言わずに廊下に飛び出す。だけど、もう彼の姿はどこにもなかった。
―置いていかれた―
ヤダヨ マッテ オイテイカナイデ…!!
――え……?
何か、心の奥深いところで小さな私が叫んでる。
これは…昔のキオク……?
「うさぎ!!」
涙が勝手に溢れて。それを見たひーちゃんは眉間に皺を寄せた。そして私の涙を拭って言った。
「うさぎ、俺はお前が好きだ。」
「私も、すき、だよ…?だって、大事な幼馴染だもん…」
「そんな風に言わなくていい。分かってるだろう?女としてうさぎのことが好きだ。」
「え?」
「俺は一生、おまえだけだと決めている。俺と付き合え。うさぎ。」
「…!!」
女として?一生…?
人通りの多い廊下でひーちゃんの言葉だけが、真っ直ぐに私のところに飛び込んできた。
あいつの気配は、いくら辿ってもどこにもなくて。幼馴染の突然の言葉も重なって。
私の胸の中は今までで一番ざわざわと大きく波打っていた。
こんなに怖いくらい真剣な顔をしたひーちゃんを見るのは初めてだった。
本気…なんだ。ひーちゃんは私の事を本気で思ってくれていることがよく分かった。ごめんね今までちっとも気付かなくて。
だから私もちゃんと本当の気持ちを話さなきゃ。
「ごめん。私ひーちゃんのこと、そんな風に考えた事が無くて…でもね、」
「だったら今から考えてみればいい。」
「ひーちゃん!私、」
「まさかとは思うがあのふざけた男を――
「…!」
私の事を見て何かに気付いたような幼馴染は怖い顔をして両肩を掴んできた。
「そうなのか!?あんな突然現れてたかだか数日しか会ってもいない男に、幼い頃からずっと傍にいた俺が負けたとでもいうのか!?」
「そうじゃない!そうじゃない…けど、ひーちゃんのことはやっぱり幼馴染としか考えられない…!!」
「うさぎ…」
肩の手が力なく離れる。
「ごめん…」
私が泣きそうになるのはおかしいと思う。でも、大事な幼馴染を傷つけていることが彼の表情を見たら痛いほど伝わってきて…謝る声も震えてしまった。
「ごめんね…ひーちゃん。」
それでも私にはそれしか言えない。予鈴を合図に、ひーちゃんのことをこれ以上は見れずに駆け出した。
「認めん…っ俺は認めんぞ!うさぎのことを一番よく分かってるのは俺だ…!」
苦しそうに叫ぶ彼の声を背に。
つづく