第一話 『私の幼馴染』
「やくそくだよ。おおきくなったらうさちゃんのこと、ぼくのおよめさんにしてあげる。だから、ぼくのこと――――
―――
ピピピピピピピ
目覚ましの音に目が覚める。
あれ?私今なんの夢、見てたんだっけ…。
体を起こして目を擦ろうとして頬が濡れているのに気付いた。泣いていた。どんな、夢を見て…?
「うさぎー!朝ごはんできたわよー?」
「あ、はーーい!!」
ママの声に慌ててベッドから立ち上がってとにかく顔を洗うために洗面所へと向かった。そして完全に夢のことは朝の忙しさの中に消えていってしまった。
玄関の門を閉めると、ほぼ同時に隣の門も閉められる音がする。
「おはよううさぎ。今日もまた一段と美しいぞ。同じ時刻に家から出るなんて、やはり俺達の間には得がたい運命的なものがあると感じずにはいられないな。」
「……」
「おっはよう!ひーちゃん!あーちゃん!」
いつもの幼馴染の二人に答えると、すぐさま踵を返して歩き出す。もー。ひーちゃんはいっつも大袈裟なんだから。社交辞令だと分かっている私としては全然どきどきとかも無いんだけどね。
「おいお前。兄さんをそう呼ぶなといつも言っているだろう。兄さんの名はひかる。全ての物を光り輝かせるという素晴らしい名前が…」
「いいだろう蒼影 。俺は一向に構わんぞ。」
「あーちゃ…蒼影先輩、ごめんね!でもなあ、ひーちゃんはひーちゃんだから。」
「そう、俺はひーちゃんだ。なあうさぎ。」
「兄さん!!」
中高一貫の学校に通う私達。ちなみに私は中等部の二年生。
私とひーちゃんの間に入ったあーちゃんがお小言を言いながらの登校は私が中学校に進学したときからの見慣れた朝の風景だ。
昔のあーちゃんは私よりも泣き虫でよくケンカ相手を追っ払ってあげたりしてた。いつもひーちゃんをにいさんにいさんとくっ付いていた姿は、年下の私から見ても可愛かったのに。中学に入ってからは私には全然笑わなくなっちゃったんだよね。何でかな?ひーちゃんも始めは大人しい男の子だったけどすぐに今みたいな性格になった気がする。
とにかく二人は私が小学校一年のときにお隣に引っ越してきた四つ上と二つ上の幼馴染だ。
だから私にとっては黒月光輝先輩と黒月蒼影先輩というよりは、やっぱりひーちゃんとあーちゃんのままなの。
「もうすぐ定期テストだな。うさぎ、不安ならまた勉強を見てやるぞ。」
「え!?いーよいーよ!!大丈夫っ!亜美ちゃんに教えてもらうから!」
学園前に停まる路線バスに乗り込むとひーちゃんは不意にそんなことを言った。
ひーちゃんは、頭は悪くないと思うの。でも。前に教えてもらったときにはっきり思った。すぐに自分の世界に入り込んじゃうひーちゃんは人に教えるのはちょっと…。
「この女に教えるだけ無駄だよ。そんなことの為に兄さんの貴重な時間を割いてやることはない。」
「そーだよひーちゃんは生徒会長だから色々とやらなくちゃいけないことがあるでしょ!?」
「うさぎは何て気遣いの出来る女性だ。その心は実に素晴らしいが…。遠慮することは無いぞ。」
そこで次の停車駅に停まる。するとそこから乗ってきた美奈子ちゃんが私達に気付いて「おっはよん♪うさぎっ!!」と隣にやって来た。
「おはよーー!」
美奈子ちゃんありがとう!
ひーちゃんへの返事に困っていた私は助けが入ったとばかりに笑顔で親友を出迎えた。
「あ、黒月先輩達もおはようございます!」
「おはよう。愛野くん。」
「…おはよう。」
やーっぱり。変なの。ひーちゃんは完全に生徒会長様の顔になってるし、私にはいつも絶対挨拶してくれないあーちゃんも普通に微笑んで挨拶してるし。
まあそれもいつものことだから完全にスルーして、あとは美奈子ちゃんとの会話に花を咲かせてバスに揺られていった。
―――
ピピピピピピピ
目覚ましの音に目が覚める。
あれ?私今なんの夢、見てたんだっけ…。
体を起こして目を擦ろうとして頬が濡れているのに気付いた。泣いていた。どんな、夢を見て…?
「うさぎー!朝ごはんできたわよー?」
「あ、はーーい!!」
ママの声に慌ててベッドから立ち上がってとにかく顔を洗うために洗面所へと向かった。そして完全に夢のことは朝の忙しさの中に消えていってしまった。
玄関の門を閉めると、ほぼ同時に隣の門も閉められる音がする。
「おはよううさぎ。今日もまた一段と美しいぞ。同じ時刻に家から出るなんて、やはり俺達の間には得がたい運命的なものがあると感じずにはいられないな。」
「……」
「おっはよう!ひーちゃん!あーちゃん!」
いつもの幼馴染の二人に答えると、すぐさま踵を返して歩き出す。もー。ひーちゃんはいっつも大袈裟なんだから。社交辞令だと分かっている私としては全然どきどきとかも無いんだけどね。
「おいお前。兄さんをそう呼ぶなといつも言っているだろう。兄さんの名はひかる。全ての物を光り輝かせるという素晴らしい名前が…」
「いいだろう
「あーちゃ…蒼影先輩、ごめんね!でもなあ、ひーちゃんはひーちゃんだから。」
「そう、俺はひーちゃんだ。なあうさぎ。」
「兄さん!!」
中高一貫の学校に通う私達。ちなみに私は中等部の二年生。
私とひーちゃんの間に入ったあーちゃんがお小言を言いながらの登校は私が中学校に進学したときからの見慣れた朝の風景だ。
昔のあーちゃんは私よりも泣き虫でよくケンカ相手を追っ払ってあげたりしてた。いつもひーちゃんをにいさんにいさんとくっ付いていた姿は、年下の私から見ても可愛かったのに。中学に入ってからは私には全然笑わなくなっちゃったんだよね。何でかな?ひーちゃんも始めは大人しい男の子だったけどすぐに今みたいな性格になった気がする。
とにかく二人は私が小学校一年のときにお隣に引っ越してきた四つ上と二つ上の幼馴染だ。
だから私にとっては黒月光輝先輩と黒月蒼影先輩というよりは、やっぱりひーちゃんとあーちゃんのままなの。
「もうすぐ定期テストだな。うさぎ、不安ならまた勉強を見てやるぞ。」
「え!?いーよいーよ!!大丈夫っ!亜美ちゃんに教えてもらうから!」
学園前に停まる路線バスに乗り込むとひーちゃんは不意にそんなことを言った。
ひーちゃんは、頭は悪くないと思うの。でも。前に教えてもらったときにはっきり思った。すぐに自分の世界に入り込んじゃうひーちゃんは人に教えるのはちょっと…。
「この女に教えるだけ無駄だよ。そんなことの為に兄さんの貴重な時間を割いてやることはない。」
「そーだよひーちゃんは生徒会長だから色々とやらなくちゃいけないことがあるでしょ!?」
「うさぎは何て気遣いの出来る女性だ。その心は実に素晴らしいが…。遠慮することは無いぞ。」
そこで次の停車駅に停まる。するとそこから乗ってきた美奈子ちゃんが私達に気付いて「おっはよん♪うさぎっ!!」と隣にやって来た。
「おはよーー!」
美奈子ちゃんありがとう!
ひーちゃんへの返事に困っていた私は助けが入ったとばかりに笑顔で親友を出迎えた。
「あ、黒月先輩達もおはようございます!」
「おはよう。愛野くん。」
「…おはよう。」
やーっぱり。変なの。ひーちゃんは完全に生徒会長様の顔になってるし、私にはいつも絶対挨拶してくれないあーちゃんも普通に微笑んで挨拶してるし。
まあそれもいつものことだから完全にスルーして、あとは美奈子ちゃんとの会話に花を咲かせてバスに揺られていった。
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