甘い甘いまもうさ

ポッキーの日とハロウィン

衛のマンションの一室ではうさぎが暇を持て余していた。
なぜなら彼から「カダイアルカラ」という名のいつもの放置プレイが発動していたからである。

余りにもすることがなくなってしまった彼女は、常であればふかふかソファーで寝てしまうのだが。どうにも小腹がすいていた。
そこでキッチンを物色し、チョコ好きで定評のある衛のポッキーを丸々ひと箱あっという間に空にしてしまったのだからさあ大変。
一休みにリビングに衛が来たのとほぼ同時に食べ終え、なんの証拠隠蔽もできないままうさぎはへへへととりあえずの笑みを苦し紛れに浮かべたのだが。

それが良くなかったのかはたまた何かのスイッチを入れたのか。若干の黒モード発動の衛は「うさ」と低い声で呼んだかと思えばものの数秒で彼女のいるソファーまで移動した。

そして囲うようにソファーの背もたれに両手を置いてご立腹も露わに恋人に言葉を投げた。



「くそ…っお菓子(ポッキー)くれなきゃお仕置きだ。」

しかしなぜかその真剣な様子に(可愛い…っ)とときめくうさぎ。

「ごめんなさいまもちゃん。」

まずは謝罪の一言を入れるのだがお菓子を取り上げられた子供みたいにムッとした顔を崩さない衛にますますきゅんと母性本能がくすぐられる。
そのうちピン!と何かをひらめいたうさぎはすっと彼の両腕の中から抜けてボフンとソファーに身を横たえさせた。
そして自分でも実は買ってきていたことを思い出してちょうど床にあった通学カバンからポッキーをひと箱取り出すと、飛びっきりの笑顔で制服から覗く谷間にずぼっと挟んで両手を差し出した。



「はい♪両方召し上がれ♪♪」


黒モード王子に拮抗する力を持つ天然小悪魔スキル発動。

当然その殺傷力にスポーンと何かが飛び出して行った衛。

(あー…かわいいもうバカこのこなんなのバカかわいい)

「ずるいな、うさは……!」

噛み付くようなキス。それを全て受け止めるうさぎ。ポッキーの箱がつぶれそうになるほど抱きしめるからさすがにうさぎも抗議する。するとそれをがっとどかしてその先の秘められた何よりも甘いお菓子にかぶりついた。


ハロウィンもポッキーゲームも課題も忘れて愛しい愛しい恋人とものすごく甘くてありえないほど近い週末を過ごしたのである。

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