給食ラプソディー(幼馴染まもうさ)

※2人は小学2年くらいで同じクラス


キーンコーンカーンコーン…

「やったあー!!きゅうしょくだー!!」

4時間目の授業終了のベルが鳴ると、一番にそう言ったのはうさぎ。給食を楽しみに学校に来ているような元気なお団子頭の女の子だ。

「月野さん?日直の挨拶が先ですよ?」

「あ、そうだった…」

クラス中から笑い声が起こり、うさぎは赤面する。そんな可愛らしい少女を隣から苦笑する整った顔をした黒髪の少年。

「起立!」

その少年、衛は同じく日直で、うさぎに代わり号令を掛けた。

慌ててうさぎも立ち、「礼!ありがとうございました!」と2人で声を合わせて全員が復唱し、ようやく念願の給食タイムへと突入した。

「きょーのメニューはなんでしょね~♪」

「うさちゃんはホント、食べるのが一番すきだよね。」

「うん!でもまもちゃんもだーいすきだよ♪」

「……」

給食着に着替えたうさぎは同じく当番の衛と手を繋いで配膳台を受け取りに廊下を歩いている。

衛は仄かな恋心をこの幼馴染に抱いているのだがうさぎはイマイチ無自覚で、こんな風に満面の笑顔でそんなことを言っては衛を黙らせていた。

(うさちゃんの中では食べものとぼくは同じってこと…?)

複雑な心境である。



「あああー!!」

「ど、どうしたの?」

配膳台の中身をチラッと嬉しそうに確認していたうさぎが突然叫ぶ。

「ま、まもちゃ…」

あまりの動転ぶりにまさか虫でも入ってるのかと思った衛はうさぎが開けていた蓋の中身を覗く。

そして納得する。そこにはニンジンの甘露煮が入っていたのである。食いしん坊のうさぎが唯一苦手な食べ物だ。

「うさちゃん。好ききらいはだめだよ?ちゃんとニンジンも食べましょう。」

「ふえぇっまもちゃんのイヂワル!!」

とにかく運ぼう、と促して2人で配膳台を押すが、目に見えてうさぎはブルーだ。
配膳台の他の容器を見て衛ははっと思い付く。

教室に着き配膳テーブルに給食をセットしてからまだ元気のない幼馴染に小声で言った。

「ねえうさちゃん」

「…なあに?」

人差し指を立ててナイショのポーズを取ると今セットしたデザートをちらっと見た。

「ちゃんとニンジン食べたら、デザートの冷凍みかん、ぼくのをはんぶんあげるよ」

ウインクして優しく言う衛にうさぎは胸を鳴らし、ぱあっと花が咲くような笑顔を見せて。

「ありがとまもちゃん!!」

無邪気に抱き付いたのだった。

「あー!月野と地場がまたケッコンしてるぞー!!」

そんな風にクラスメイトに囃し立てられて真っ赤になる衛と、えへへと嬉しそうに笑ううさぎ。

どうやら2人の仲は早くもクラス公認のようだ。





おわり
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