挨拶がわりの告白(エリちび)




「スモール・レディ…?」

エリシュオン祭司のエリオスは、私を見るなりそう言って驚きでその場に立ち尽くしていた。

パステルピンクのドレスを翻しながら高鳴る鼓動と上がる息を隠すことも無く彼に近付く。

数年ぶりに会う大切な人は、変わらずに物腰の柔らかい雰囲気に綺麗な瞳。

その瞳の中にはあの頃よりも急激に成長した私が映されていた。

「やっと…会えたね。」

瞳の中の私がそう言って笑顔で涙を流す。

でもそこからは視界がぼんやりしてよく見えなくなった。

私は目の前の彼が何か答えてくれるのを待つ。

でも嗚咽が次第にしゃくり上げるほどの涙に変わっていって、後から後から零れ落ちるそれを拭うのに一杯一杯で。



肩に、腰に、頬に…胸に。ずっと求めていた温もりに包まれているのに気付いたときには、まるで子供の頃のように声を出して泣いていた。


「僕の…乙女。そんなに泣かないでください…。」

心まで溶けてしまいそうなほどの甘くて優しい声が少し掠れて聞こえてくる。

「ごめん…ごめんね。でも…っ止まらなくて…!」

「僕も、あなたがそんなに可愛いと…抑えられなくなりそうです。」

抱き締める力が強くなって、頬に流れる涙を掬う様にキスが落とされた。

「エ…リオス…!?」

思わず顔を離してエリオスをみると、あの頃いつも少し感じていた一歩引いた空気が消えていて。

なんだかすごく、男の人の表情をしていた。

それが私の胸の鼓動を更に騒がしくさせて、金縛りにあったように目を逸らせなくなる。

「会いたかった。僕だけのプリンセス。」

そう言って、額、前髪、頬を確かめるように撫でていって、ママのように長くなった髪をそっと指に絡めて手に取ると口付ける。

その一連の動作に私の頬は赤く色付いていった。

「エリオス…!」

どうしていいか分からずに彼の名を呼んで服をギュッと掴む。

「申し訳ありませんプリンセス。失礼をどうかお許し下さい。」

けれど、ぱっと離れてしまった彼は跪いて祭司の顔に戻り頭を下げてそう言った。

私はそんな線を引かれるのが嫌で膝を付くと今度はこちらから抱き締める。

「いいの。びっくりしただけ。だから、そんな風に謝らないで。」

「プリンセス…」

そう言ったエリオスは、膝立ちになって再び私のことを包んでくれた。

そして、額の三日月にそっと唇が寄せられて、私たちは見つめ合うと微笑んだ。






「あのね、エリオスに会ったら挨拶よりも先に言いたかった事があるの。」

「何ですか?」

優しい瞳。私にだけ向けられる素敵な笑顔。

これからはずっとずっとこうして隣で微笑み合っていきたい。

「エリオス…大好きよ。」

彼は一瞬瞳を揺らしてから、さっきよりもずっと温かい笑顔になるとそのまま頬を両手で包み込んでキスしてくれた。


「僕も、大好きだよ。レディ・セレニティ…。」


飾らない彼の本当の言葉。



私は嬉しくて、嬉しくて。愛しいその人の胸に飛び付いた。







おわり
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