もう一度あなたに会いたくて(エンセレ)
彼の顔をようやく見ることが出来た私は嬉しくて
嬉しくて
素直な気持ちがそのまま言葉となって出てきたの。
彼はそんな私に微笑んで
「会いたかった」
ただ一言、同じ言葉を私にくれた。
「嬉しい…」
「私も、嬉しいです」
私の言葉を繰り返す彼に胸が一杯になる。
もう一度微笑めば、彼も控えめな、けれどとても温かい微笑みで私を見つめていた。
それは月の光よりも私の心にじわりと染み渡っていくようで、もう彼から目を逸らすことができなくなった。
これはきっと最初で最後の恋。
私はあなたに会うために生まれてきたのだと、その時に思ったの。
「名前を…教えてくれませんか?」
「私の、名前は…」
とうとうその名を明かした時、彼が嬉しそうに私を小さく呼べば、たった一つの特別な響きになって。
瞳から今まで流したこともない甘い涙が頬を滑り落ちていった。
おわり