甘い甘いまもうさ
あなたは優しすぎる
いつの間にかソファーで寝てしまっていた。
温かくて柔らかでふわふわな感触が頬をくすぐる。全身をくるまれてる。
「掛けてくれたんだ…」
暖かな正体。毛布から抜け出して目線を降ろせば。艶があって触るとするっと指がすぐに通り抜けてしまうほどサラサラで柔らかい彼の髪が見えて。そんな漆黒の髪の毛の持ち主は、カーペットに腰を下ろしてすうすうと寝息を立てていた。
私は彼の名を呼びながら肩を揺する。すると少しまどろんだ声で小さく唸って、微笑んで私を見上げてくる。
「起きたか」
「うん。ごめんね寝ちゃって。毛布ありがと!」
「いや、」
言いかけてくしゃみをする彼にはたとなる。
「まもちゃん!私には毛布掛けてくれたのにまもちゃんはそのままで寝ちゃったの!?風邪引いちゃうよ。」
「俺は大丈夫。寝たのもほんの数分だよ。それよりもうさのほうが腹出して寝てたんだから風邪引くと思ってさ。」
部屋の時計を見てから私のことをにっと笑いながら言う彼に、もう!とクッションで軽く頭を叩いた。
「こら。ぶつんじゃありません。」
「だあってまもちゃんがイジワルなこと言うから…!」
嘘。意地悪なんかじゃない。まもちゃんは優しい。優しすぎるの。
「ごめんごめん。さて、そろそろ帰るか?送るよ。今日はおばさんの特製豪華シチューが待ってるんだろ?」
開きっぱなしだった本を閉じてテーブルに置くとまもちゃんは立ち上がった。
「あ、うん!そうだった!まもちゃんも食べに来る?」
「嬉しいけど、ちょっとこの後も課題をやらないと。また今度お邪魔させて頂くよ。」
「そっかー…ごめんまもちゃん。私が遊びに来たから課題全然できなかった、よね。」
「いいんだ。俺もこうしてたかったし。うさが気にすることじゃない。それに、ちょっと休まないとああいう作業ははかどらないだろ?」
「ほんとに休めた?風邪引いてない?」
「大丈夫。今上着持ってくるから待ってて。」
私の頭をぽんぽん優しく叩いてクローゼットに向かう彼の背中を見つめると胸の中がきゅうっとなった。
ほらね。まもちゃんはいつだって優しいの。
私はまもちゃんが持ってきてくれた上着を着てマフラーと手袋も身に付けて鞄を持つと、用意の出来た彼と一緒に玄関へ向かう。
靴を履いてふと目が合うと、外に出る前の最後のこの瞬間に、どちらとも無くキスをした。
.
「ねえまもちゃん」
じっと見つめると、ほら、と手を差し出してくれて、手を繋ぐ。
なんでもわかっちゃうのね、私が思ってること。
前にそう言ったら、うさは分かり易いからなと大好きなちょっと控え目な笑顔で答える彼。それがちょっとくすぐったくて嬉しくて。
「ねえまもちゃん」
家の前に着いてしまって寂しさが声に滲んでしまった私は彼のコートの裾をくんと引く。
そしたら肩を抱き寄せてキスしてくれる。
そんな彼に私の胸は一杯になってしまって、そのまま両手を彼の背中に回してぎゅうっとしがみ付く。
こうしたら、次は…私を攫ってくれる?
「ねえ、まもちゃん」
見上げたら、優しかった恋人の瞳はどこか余裕を無くしたものになっていて。それでも。抱き締め返してくれたその腕は、やっぱりどこまでも優しかった。
攫ってくれなくてもいい。もう少しだけ、この温かな場所に包まれていられるなら。
優しい、やさしい彼の温もり、呼吸、声、手。全部全部。あと、もう少しだけ。
いつの間にかソファーで寝てしまっていた。
温かくて柔らかでふわふわな感触が頬をくすぐる。全身をくるまれてる。
「掛けてくれたんだ…」
暖かな正体。毛布から抜け出して目線を降ろせば。艶があって触るとするっと指がすぐに通り抜けてしまうほどサラサラで柔らかい彼の髪が見えて。そんな漆黒の髪の毛の持ち主は、カーペットに腰を下ろしてすうすうと寝息を立てていた。
私は彼の名を呼びながら肩を揺する。すると少しまどろんだ声で小さく唸って、微笑んで私を見上げてくる。
「起きたか」
「うん。ごめんね寝ちゃって。毛布ありがと!」
「いや、」
言いかけてくしゃみをする彼にはたとなる。
「まもちゃん!私には毛布掛けてくれたのにまもちゃんはそのままで寝ちゃったの!?風邪引いちゃうよ。」
「俺は大丈夫。寝たのもほんの数分だよ。それよりもうさのほうが腹出して寝てたんだから風邪引くと思ってさ。」
部屋の時計を見てから私のことをにっと笑いながら言う彼に、もう!とクッションで軽く頭を叩いた。
「こら。ぶつんじゃありません。」
「だあってまもちゃんがイジワルなこと言うから…!」
嘘。意地悪なんかじゃない。まもちゃんは優しい。優しすぎるの。
「ごめんごめん。さて、そろそろ帰るか?送るよ。今日はおばさんの特製豪華シチューが待ってるんだろ?」
開きっぱなしだった本を閉じてテーブルに置くとまもちゃんは立ち上がった。
「あ、うん!そうだった!まもちゃんも食べに来る?」
「嬉しいけど、ちょっとこの後も課題をやらないと。また今度お邪魔させて頂くよ。」
「そっかー…ごめんまもちゃん。私が遊びに来たから課題全然できなかった、よね。」
「いいんだ。俺もこうしてたかったし。うさが気にすることじゃない。それに、ちょっと休まないとああいう作業ははかどらないだろ?」
「ほんとに休めた?風邪引いてない?」
「大丈夫。今上着持ってくるから待ってて。」
私の頭をぽんぽん優しく叩いてクローゼットに向かう彼の背中を見つめると胸の中がきゅうっとなった。
ほらね。まもちゃんはいつだって優しいの。
私はまもちゃんが持ってきてくれた上着を着てマフラーと手袋も身に付けて鞄を持つと、用意の出来た彼と一緒に玄関へ向かう。
靴を履いてふと目が合うと、外に出る前の最後のこの瞬間に、どちらとも無くキスをした。
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「ねえまもちゃん」
じっと見つめると、ほら、と手を差し出してくれて、手を繋ぐ。
なんでもわかっちゃうのね、私が思ってること。
前にそう言ったら、うさは分かり易いからなと大好きなちょっと控え目な笑顔で答える彼。それがちょっとくすぐったくて嬉しくて。
「ねえまもちゃん」
家の前に着いてしまって寂しさが声に滲んでしまった私は彼のコートの裾をくんと引く。
そしたら肩を抱き寄せてキスしてくれる。
そんな彼に私の胸は一杯になってしまって、そのまま両手を彼の背中に回してぎゅうっとしがみ付く。
こうしたら、次は…私を攫ってくれる?
「ねえ、まもちゃん」
見上げたら、優しかった恋人の瞳はどこか余裕を無くしたものになっていて。それでも。抱き締め返してくれたその腕は、やっぱりどこまでも優しかった。
攫ってくれなくてもいい。もう少しだけ、この温かな場所に包まれていられるなら。
優しい、やさしい彼の温もり、呼吸、声、手。全部全部。あと、もう少しだけ。