甘い甘いまもうさ
甘噛み
「まもちゃん!おまたせ!」
「いや、今日は待ってないよ。珍しく居残りなかったのか?」
一ノ橋公園でうさこを待ちながら読んでいた文庫本はいつもよりも短いところで区切りを付けたからそんな風に言ってみると、彼女は可愛く頬を膨らませた。
「もーいじわる!私だってちゃんと帰れる時だってあるもん。」
そう言いながらぴょこんと隣に腰掛けて唇を尖らせる。けれど頭をくしゃくしゃ撫でれば途端に頬を染める。そうやって目まぐるしく変わる表情にいちいち胸が鳴ってしまうのは…普通だよな?
「悪かったって。うさこはこの後どうしたい?」
「えーとね、実はね、今日はまもちゃんに渡したいものがあって…」
歯切れ悪く目線を落として少し前屈みになると、露わになったうなじと耳が赤く色付いくのが見えて自分でも驚くほどに心臓が跳ねた。思わず凝視してしまう。そして仄かに掠める彼女の香り。
美味しそうだな…
湧いて出たのは、うららかな春の午後の公園には似つかわしくない感情。
ば、馬鹿か!俺は何考えてるんだ!美味しそうって…何だよ!
π=3.14159265359…
!?
必死に円周率を浮かべて理性を呼び戻そうとしていると、うるっとした上目遣いで見てきた恋人にそんな思考も止まる。誘われているわけでは決して無いと言うのに心臓が忙しなくなり続ける。
「あのね、へたっぴって笑わない?」
「…え?」
「調理実習でね、絞り出しクッキー作ったの。あ!味はね、なるちゃんが測ってちゃんと作ったから美味しいの!でも絞り出しが上手くできなくて…」
しゅんとした彼女の様子が幼く見えて、心が和み、失くしかけていた理性を立て直す事に成功した。ほっと胸を撫で下ろす。
「笑わないよ。うさこが一生懸命みんなと作ったんだから。」
ゆっくり頭を撫でて笑みを送れば、嬉しそうに笑う。
ああ、やっぱりうさこは笑顔が一番だ…
満足感を得てクッキーを催促するとその包みを開けた。
確かに形は個性的だったが、味は言う通り美味しくて。俺は美味いと率直に感想をこぼしてうさこを見たのだが、その表情に吹き出した。
「うさこも食べろよ。」
クッキーを指を咥えてじぃっと見ていたうさこは慌てだす。
「え?!いいの??…で、でもでも!それはまもちゃんにあげるために持ってきたんだし…!!」
「俺にくれるために自分の我慢してたんじゃないか?」
「なんで…?!」
分かるの??という心の言葉がそのまま顔に出ていてまた笑ってしまって。本当に、俺はうさこと一緒にいるようになって以前とは考えられないくらいたくさん笑うようになったなと思う。
ほらと一枚差し出すと、少し考えてから俺を見て、恥ずかしそうにしながらも嬉しそうにありがとう!と受け取った。
「おいしー!」
「そうだな。一緒に食べると、美味いな。」
食べてる時の彼女の幸せそうな顔。そんな愛しい存在と同じものを食べ、時を共有できる幸せ。
正直に思ったことを口にしただけなのだが、俺の顔を見つめていたうさこは再びうるうるとした目で真っ赤になった。
ああ
だから
「そんな顔してると、うさこの事も食べちまうぞ?」
「…!!!?」
抱き寄せて耳元に低い声でそう囁けば、赤く色づく可愛い耳を味見とばかりに甘噛みし、口付けも落とす。
限界ギリギリの行為とその先を止めさせるための警告を可愛い彼女にしただけのはずたったのだが。
その後10分間真っ赤なままフリーズしてしまったうさこに己の行動を猛省することになる---高校三年生の春。
「まもちゃん!おまたせ!」
「いや、今日は待ってないよ。珍しく居残りなかったのか?」
一ノ橋公園でうさこを待ちながら読んでいた文庫本はいつもよりも短いところで区切りを付けたからそんな風に言ってみると、彼女は可愛く頬を膨らませた。
「もーいじわる!私だってちゃんと帰れる時だってあるもん。」
そう言いながらぴょこんと隣に腰掛けて唇を尖らせる。けれど頭をくしゃくしゃ撫でれば途端に頬を染める。そうやって目まぐるしく変わる表情にいちいち胸が鳴ってしまうのは…普通だよな?
「悪かったって。うさこはこの後どうしたい?」
「えーとね、実はね、今日はまもちゃんに渡したいものがあって…」
歯切れ悪く目線を落として少し前屈みになると、露わになったうなじと耳が赤く色付いくのが見えて自分でも驚くほどに心臓が跳ねた。思わず凝視してしまう。そして仄かに掠める彼女の香り。
美味しそうだな…
湧いて出たのは、うららかな春の午後の公園には似つかわしくない感情。
ば、馬鹿か!俺は何考えてるんだ!美味しそうって…何だよ!
π=3.14159265359…
!?
必死に円周率を浮かべて理性を呼び戻そうとしていると、うるっとした上目遣いで見てきた恋人にそんな思考も止まる。誘われているわけでは決して無いと言うのに心臓が忙しなくなり続ける。
「あのね、へたっぴって笑わない?」
「…え?」
「調理実習でね、絞り出しクッキー作ったの。あ!味はね、なるちゃんが測ってちゃんと作ったから美味しいの!でも絞り出しが上手くできなくて…」
しゅんとした彼女の様子が幼く見えて、心が和み、失くしかけていた理性を立て直す事に成功した。ほっと胸を撫で下ろす。
「笑わないよ。うさこが一生懸命みんなと作ったんだから。」
ゆっくり頭を撫でて笑みを送れば、嬉しそうに笑う。
ああ、やっぱりうさこは笑顔が一番だ…
満足感を得てクッキーを催促するとその包みを開けた。
確かに形は個性的だったが、味は言う通り美味しくて。俺は美味いと率直に感想をこぼしてうさこを見たのだが、その表情に吹き出した。
「うさこも食べろよ。」
クッキーを指を咥えてじぃっと見ていたうさこは慌てだす。
「え?!いいの??…で、でもでも!それはまもちゃんにあげるために持ってきたんだし…!!」
「俺にくれるために自分の我慢してたんじゃないか?」
「なんで…?!」
分かるの??という心の言葉がそのまま顔に出ていてまた笑ってしまって。本当に、俺はうさこと一緒にいるようになって以前とは考えられないくらいたくさん笑うようになったなと思う。
ほらと一枚差し出すと、少し考えてから俺を見て、恥ずかしそうにしながらも嬉しそうにありがとう!と受け取った。
「おいしー!」
「そうだな。一緒に食べると、美味いな。」
食べてる時の彼女の幸せそうな顔。そんな愛しい存在と同じものを食べ、時を共有できる幸せ。
正直に思ったことを口にしただけなのだが、俺の顔を見つめていたうさこは再びうるうるとした目で真っ赤になった。
ああ
だから
「そんな顔してると、うさこの事も食べちまうぞ?」
「…!!!?」
抱き寄せて耳元に低い声でそう囁けば、赤く色づく可愛い耳を味見とばかりに甘噛みし、口付けも落とす。
限界ギリギリの行為とその先を止めさせるための警告を可愛い彼女にしただけのはずたったのだが。
その後10分間真っ赤なままフリーズしてしまったうさこに己の行動を猛省することになる---高校三年生の春。