狼の休息(まもうさ)



「まって…!まもちゃんっ!」

「やだ。」

やだって…やだってそんなちょっと可愛い感じで言われたら…どっどうしたら…!?

いつもより甘えん坊な彼に脳内がパンクしそうになっていると、掴んでいた手はすぐに離されて、中途半端に開かれた胸に顔を埋められる。

「ぁ…だめ…!」

「じゃあ、勝手に着るの禁止な。」

私の反応に満足そうにした彼は、そんなことを言ってきた。

「うっ…はい…。」

辻褄が合わないようなことを言われているのに何もまともに考えられなくなっていた私はそう答えるしか無かった。

月明かりで彼の蒼い瞳は獲物を捕らえたかのように一瞬きらめいて…その顔で言われたらいつだって逆らえない。

真っ赤にして涙目で見つめていると、目の前の恋人はいよいよ狼全開の顔をして笑う。


食べられちゃう…!!


そんなバカなことを思った矢先、彼の唇は私の唇に重なる。


ドキドキが収まらなかったけれど、想像していたよりもそれは優しいキスで。

唇が離れるとそのままくたりと肩口にもたれてくる。

「だめだ…思ってたより眠かった…」

本当にすごく眠そうに悔しがるまもちゃんに緊張が一気に抜けて、ふっと笑みがこぼれる。

「今日まで課題頑張ってたんだもん。仕方ないよ。」

まるで子どもをあやすようにトントン背中を叩く。

なんだかいつもと逆みたい。でもこういうまもちゃん、可愛い…な。


「続きは明日の朝だから…」


寝入る直前としてはかなりの爆弾発言に再び私は何も言えなくなる。


だけど次の瞬間には子どもみたいな寝顔で私に安心しきって体を預けてスヤスヤ眠るまもちゃんに、何もかも負けたような気分になっていた。



「おやすみ、まもちゃん。」




かっこよくて頼りになって



可愛くて離したくなくて






私はそんなあなたが大好きよ













おわり
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