狼の休息(まもうさ)
「まもちゃん、寝ちゃった…?」
カーテンから月明かりがぼんやりと部屋を照らす中、布団に再び潜り込んだ私は大好きな彼にそう尋ねる。
「…どうした?」
やっぱり少し眠そうな声。多分絶対寝てたんだけど、甘えん坊な私は分かっていてもどうしてもまもちゃんの声が聞きたくて。
だから私の言葉に答えてくれて、優しく頭を撫でられて…たったそれだけが本当に嬉しかった。
「んーん…聞いてみただけ♪」
きゅうっと素肌の胸に腕を回してしがみつくと、今度は背中を撫でてくれる。だけどその手がふと止まって、薄明かりの中、彼がうっすらと目を開けるのが見えた。
「うさ、服着たのか…?いつもはそのままなのに。」
ぼそりと残念そうに呟くまもちゃんは、言ってる内容は全然そうじゃないんだけど、どうにも拗ねた子供みたいで。
私は赤くなりながらも答える。
「え?あ、えっと…なんか今日は目が冴えちゃって…!シャワー借りてパジャマに着替えたの!」
「ふーん。」
完全に目を開いたまもちゃんは、なんだか急に静かな狼みたいに私のことを見つめてくるから、普段はあまり発動しない私の中の危険信号がチカチカ鳴り始める。
心臓が跳ね上がりそうなのを何とか堪えると、ぐるりと背を向けた。
だけどこの体勢はむしろ逆効果だったことをすぐに思い知ることになる。
背後からガシリと抱き寄せられて、うなじ辺りに顔を埋めてくるから結局抑えていた心臓が大暴走を始めた。
「ま…まもちゃん…あの…」
「足りなかったのか?」
「え!あ…っえぇ!?」
ちゅうと首筋を吸ってから甘い声で信じられないことを聞いてくる彼に言葉がうまく出てこなくて…体も火照って落ち着かない。
だけどどうにか首を横にぶんぶん振った。
「そうか?…俺はいつだってうさが足りないけどな。」
すうっと彼の手が私の体を這い出して、呼吸も上手くできずに体が震える。
「ま、まもちゃん…どしたの?なんか…なんか…いつもより…大胆だよ?」
振り向けないままそう聞くと、ぐいっと腕を引かれて反動で仰向けになる。そして目の前には不服そうな彼の顔。
「うさが勝手に服着るからだろ?」
「…え!?」
驚いていたらもう彼の手は私のパジャマの3つ目のボタンまで外していて、慌ててその手を掴む。