それは突然(クンヴィ)
少しの沈黙のあと、それを破ったのは彼女の方で
「クンツァイトって…世話焼きなのね。」
躊躇いがちにそう呟いた。
「それはヴィーナスも同じだろう?」
いつも必死に月の王女を心配し、守っている彼女の姿を思い出しながら言う。そしてなぜかそのひたむきな姿がいじらしく思い、ふっと自然に笑みがこぼれていた。
彼女は視線だけちらりとこちらに向け、その表情に一瞬驚いているようだったが、「それもそうね」と肩の力を抜いて少しはにかんだような笑顔で答えた。
それは、今まで見たことの無かった少女らしい彼女の自然な笑顔だった。
その時。自分の胸の鼓動が加速するののを秘かに感じていた。
「似た者同士ね。私達」
「ああ…そうだな。」
似た者同士か…。
そうだ。初めは立場や主に対する思いが似ているから気になっているだけだった。それが今、それだけではない物が自分の心の中に広がり始めている。
いや
初めから気付いていたのにそれを隠し切れなくなってきただけなのかもしれない。
その気持ちを振り払うかのように小枝と指先に集中する。
ところが
彼女を急に意識し始めたせいか、金星と同じ輝きを持つその美しい髪は、まるで上等なシルクの様な肌触りに感じ、ずっと触れていたい。そう思ってしまった。
そしてそんな風に思ってしまう自分に軽い衝撃を受けてしまうのだった。