short or long?(まもうさ)



「いや、駄目じゃないよ。うさが切りたいって思うなら今度美容院でお願いしてみたら?」

「でも…。」

困惑したように顔を覗き込んでくるうさにできるだけ安心するように髪をわしゃわしゃ撫でる。

「今は想像つかないけど、きっと短い髪も似合うと思うよ。」

それだけ言って微笑むと再び映画に視線を戻した。

だがその画面がプツリと急に切れてはっとうさを見ると、リモコンを握り締めて若干頬を膨らませながらこちらを軽く睨んでいる。

「うさ?」

「まもちゃんのバカ。はぐらかすのは無しだよ!」

「別にはぐらかしてなんか…。」

「嘘だ!駄目って言ったのに駄目じゃないって言ったりして!本当はまもちゃんはどっちがいいの!?」

まっすぐにそう聞いてくる彼女にどう言っていいか分からなくなる。

「じゃあこれから美容院入って来る。」

「おい!」

立ち上がる彼女の腕を慌てて掴む。

「坊主にしてくるんだから!!」

「何言ってんだ!話がずれてるぞ!」

「だってその話をまもちゃんがしないからじゃん!!」

うっすら涙目で言い返すうさの言葉で、俺は自分の意気地の無さを悔いた。


「ごめん。」

抱き寄せてまた大きく溜息をつくと一言謝罪の言葉を述べる。

「まもちゃん…。」

「切って欲しくない。」

「え?」

見上げられて何となく目を合わすのが気恥ずかしくて逸らすとポツリポツリと本音を語った。

「だから…うさは短くても似合うかもしれないけど俺は切って欲しくない。」

「それって、今のこの髪形がまもちゃんは好きってこと…?」

なんでうさはそう恥ずかしい事を確認するんだろう。

そう思いながらも俺は小さく頷く。

「まあ…そういうことだ、な。」

「じゃあ切らない♪」

あまりにもすぐに答えるその言葉に驚いて再び視線を腕の中の彼女に戻すと、にっこり笑顔で俺を見ていた。

「うさはそれでいいのか…?」

彼女の言葉は嬉しかったけれど、つい数分前に長い髪の不便さを語っていたことを思い出して聞き返す。

「いいの!だってまもちゃんにずっと、もっと好きでいてもらいたいんだもん!」


なんなんだ?この可愛い生き物は。

そんな純真無垢な微笑みでそんなこと言うのは反則だろ。

俺はぎゅうっとうさを抱き締めて、このままやられっぱなしじゃ何となく悔しくて耳元で囁いた。


「分かってないな。俺がうさをどれだけ好きなのか今から教えてやるよ。」




















おわり
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