守ってあげたい(年齢逆転まもうさパロ)



「でも…」

「帰れよ!!」

そして再び背を向ける。
タオルが目の前に落ちて胸がズキズキ痛んだ。

もう訳が分からない。どうして俺はこんな風にしかできないんだろう。

ガキな自分が堪らなく嫌だ。けれどこの状況を打破できる術を持たない俺は押し黙ることしかできない。

「分かった。帰るね?汗かいてると思うから、ちゃんと着替えてね。パジャマそこに出しといたけど…勝手にごめんなさい。」

彼女もどこかよそよそしい言葉になっていて、それが苦しくて思わず耳を塞ぎたくなった。



バタン



けれど部屋のドアが静かに閉まる音は俺の心に重く響いた。







誰もいなくなった空間が寂しくて






彼女のことが好きで






こんな自分が情けなくて






目には涙が溜まっていた。




俺はふらつく体を勢いよく起こして、どうにもならない衝動のままに、まだ彼女がいるであろう玄関に向かって駆け出した。



ごめん



嫌だ




行かないで





玄関を見れば彼女は靴を履き終えてドアノブに手を掛けているところだった。

「待って!!」


うさぎさんが振り向く前に、彼女を後ろから抱き締める。


「ど…どうしたの!?」


顔を赤くして俺の事を驚いて見ている。

俺のこと、好きでなくていいから。生意気な中学生でいいから。だから…



だから…!!



「帰らないで。お願いだから…もう少しだけそばにいて…っ」

「ちばく…ん」


掠れた声でそれだけ呟くと…俺は再び意識を失った。


―地場くん…?ま…もるくん!衛くん!!―


うさぎさんの声が聞こえた気がする。俺のこと、下の名前も憶えててくれたんだな……夢かもしれないけれど。それでも、そんな些細なことが嬉しくて――――









目が覚めた時はもうすでに朝。当然彼女の姿は無かった。

だんだん意識がはっきりしてくると、自分が彼女の去り際にしてしまったことを思い出してしまい頭が沸騰する。熱は下がったはずなのに同じくらい体が熱くて。必死で吐き出そうと体を揺り起こした。

もう頭痛は引いていて、そのままぼんやりとしたまま辺りを見回す。


するとサイドテーブルに見慣れないメモ用紙が置いてあり、すぐにそれを手に取った。



『衛くんへ。

元気になったらまたケンカして?
アンタがそんなだと調子狂っちゃうから。

それと…ナマイキなんて言ってごめんね。


ありがとう。


月野うさぎサマより』

夢じゃ、無かったんだな…。

名前を見てそう思う。


嫌われて…なかった。元気になったらまた会っても…いいんだ。

胸にこみ上げてくる安堵と温かさ。あんなに痛かったものが綺麗に消えていく。それが、嬉しくもあり、気恥ずかしくもあり。


だけど。それにしても。

「下手くそな字。」

そう言いながらも顔には笑みを浮かべていて。

窓の外を見れば、眩しい日差しが一日の始まりを告げていた。











おわり
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