守ってあげたい(年齢逆転まもうさパロ)
「もう!アンタ年下のくせに私より身長おっきいし重いし!背だって前までは同じくらいだったのにっ」
「仕方…ないだろ?成長期なんだから…。いいから、そこ右に曲がれ…」
俺は彼女の肩に腕を回されて引き摺られるように運ばれていた。
こんな情けない姿を晒すのは極めて納得いかなかったが体に全く力の入らない俺は、なされるがままだった。
熱で朦朧としているくせに、彼女の首筋の辺りから香る石鹸の匂いがやたらと鮮明に鼻を刺激してドキリとする。
けれど不本意だから言わないでおく。
「アンタってホント、偉そうなんだから!」
そう言いながらもこんな厄介な状態の俺を家まで運んでくれる彼女に心の底では感謝していた。
いつも互いに悪態ばかりついていて、俺のことなんか嫌いかと思ってたのに。この人は本当にお人好しなんだな…。
きっと相手が俺でなくても彼女は同じことをするのだろう。
そう思ったら今度は胸が少し苦しくなった。
玄関を開けた時にはようやく家に着いた安堵から、必死に紛らわせていた熱のダルさと眠気が一気に襲ってきて意識がそこでプツリと途切れた。
気付いた時には頭にひんやりとしたタオルの感触と、見慣れた天井が視界に映る。ぼんやりとした熱独特の浮遊感のような状態から覚醒しようと二、三瞬きをした時だった。
「あ!気が付いた?」
その声だけではっきりと目が覚める。
「お前…!まだいたのかよ!」
ガバッと起き上がり、しかしその瞬間目眩がして反動で再び倒れ込む。
「バカ!急に起き上がるから。それにアンタねー、年上のレディに『お前』は無いでしょ?ほら、薬飲むんだからこれ食べなさい!」
呼吸は少し楽になったけれど、頭痛が酷い。目だけチラリと彼女の方を向けるとお椀に入った温かそうな湯気を上げた何かが見えた。
「お前、それ食えるのかよ…?」
あれだけドジな彼女にまともな食事が作れるとは思えない。
だけど冷たいタオルとか、隣にずっといてくれたこととか…本当は嬉しかったから。
照れ隠しで口をついて出てしまったとも言える。
「もう怒るわよ!?私だってね、お粥くらい作れるの!」
「そうだよな。それくらい作れなきゃ、将来は絶望だもんな。」
はあ…。何言ってんだろ。調子悪い時にまでこんな可愛くねえこと言って。
また怒るんだろうな…。
そう思って彼女を見たらなぜか微笑んでいて面食らう。
「そんだけ悪態つける元気があるなら大丈夫。すぐに治るわよ。」
その笑顔に俺の心は完全に持って行かれた。