春風に寄せて(まもうさ)




「でねでね!美奈Pったらさ~」

厳しい寒さが和らぎ大分暖かく過ごしやすくなってきたこの頃。
俺とうさは広々とした公園のベンチに腰掛けて、他愛もない会話を楽しんでいた。

確かに暖かくなってきた。

日中はコートもいらないくらいの陽気となり、薄着になるのも分かる。


でもやっぱり…。


別にやましい気持ちがあるわけじゃない。あるわけじゃないけど、自然と目線は下にいってしまう…。





待ち合わせにいつものように遅れてきた彼女のことを思い出す。

彼女の格好はすっかり春仕様になっていて白地にピンクの花柄のブラウスにカーディガン、そしてふわりとした素材のミニスカート。

そこからしなやかに伸びる白い足に、ドキリとしてしまう自分がいて慌てて平常心へと戻し、うさの手を取ったのだった。






「もーまもちゃん聞いてる!?」


すると視界一杯に広がる頬を膨らませたうさの顔。


「も、もちろん聞いてるよ。」

「ほんとかなー。」

笑顔で返した俺の言葉に納得しきれていない表情でぼそっと言う。

「それより、さ。」

「なあに?」

俺は咳払いを一つ。

「ちょっと…短くないか?」

「何が?」

「……いや、いい。」

「えーなになに~!?」

別にミニスカートなんて街を歩けばこの時期にでもなればいくらでも着ている人はいる。そんな世の女性たちを見たって俺は何とも思わないでいた。

でも

何て言うか…

うさのそういう格好は他の男には見せたくない…なんて、器の狭いことを思ってしまう自分がいて…。

だけど

そんな独占欲の塊みたいなこと、うさに言えるわけない。




盛れてしまう大きな溜め息。しかしそれが彼女にどんな気持ちを与えるかなんて考えていなかった。

「まもちゃん、私といても楽しくない?」

「え?」

俺はうさのことを驚いて見る。すると、悲しそうな瞳とぶつかった。

「だって!今日は私のこと自分からは全然見てくれないし、会話もどこか上の空だし…!溜め息までついてるし…っ!!」

「うさ…それは」

言いかけて、次に何て言えばいいのか分からず言葉を詰まらせていると、うさは急に立ち上がる。

「…っ帰る!」

俺は慌てて、去ろうとする彼女の腕を掴む。

「待って!」

すると突然の春風が一陣吹き抜ける。

「きゃ!」

うさは慌ててスカートを抑える。


俺はうさのことを抱き締めてもう一度溜め息をつく。僅かに赤くなった顔をうさに見られないように彼女の顔を胸に押し当てる。


「…だから、短いって言っただろ?」

「短いって…スカートのこと!?」

ようやく俺の意図を汲んだうさはなんだか嬉しそうにしている。俺は黙って何も答えない。

「まもちゃん…もしかして…」

「…言わなくていいから」

「うさのミニスカートにドキドキしちゃって見られなかったのー!?」

顔を上げて何やらえらく嬉しそうな表情で俺にストレートにそう聞いてくる。

「だから!言わなくていいって言っただろ!?」

だめだ。

馬鹿みたいに顔が赤いのを見られてしまった…。


俺ってこんなに情けなかったか…?


まもちゃんてばかわいい!とからかう恋人が腕の中でぴょんぴょん跳ね回っていた。


おわり
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