それは突然(クンヴィ)
「ったくもー!いいわ。私が先に行ってお二人に言ってくるから!」
そう言って湖に向かって歩き始めた彼女の後ろ姿を見て、私はまた吹き出してしまった。
「あーもう!今度は何よ!」
拳を握り締めて振り返って睨み付けてくるものだから更に声を上げて笑ってしまう。
「いや…その髪飾り、月では流行っているのか?」
彼女の髪には葉の付いた枝が見事に絡まっていた。
「え!?やだもー流行ってる訳ないでしょーが!」
イラつきながら取ろうとするから余計に絡まっていく。
「全く、どういう歩き方をしたらこんなものが付くんだ?」
溜め息混じりに尋ねると、彼女はバッと木を指差す。
「うるさいわね!プリンセスを探すには上から見た方が早いと思って木から木へ跳び移ってたらこうなったの!」
その話を聞いて素直に感心し、彼女に歩み寄った。
「ほう。月の守護戦士は噂に違わぬ卓越した身体能力の持ち主なのだな。」
そして何食わぬ顔で彼女の髪から小枝を取っていく。
「ちょ…!ちょっといいわよ自分でするから!」
慌てて離れようとするものだからまた更に絡まってしまった。
「いいから動くな。すぐ取れる。」
そう言うと彼女は分かったわよと小さく言い、漸く大人しくなるのだった。