moonlight(まもうさ※死ネタ)




何も聞こえない




何も瞳に映らない





何も








感じない















朝目が覚めても君はいない




学校へ向かう俺の横に君はいない





いくら名前を呼んでも返事はない





本を読んでも合間に話し掛けてくる可愛い声は聞こえない





抱き締めたくても君の温もりはどこにも感じない







そんな





まさか





嘘だよな?







突然過ぎて冗談なんだと思ってしまう








だけどもう











「君」をどこにも感じない







ある朝突然、君はこの世界から消えた。



救急車のサイレンの音。誰かの叫び声。

それらは頭に染み付いて離れないのに。


君の声は全く聞こえなかった。

僅かに口を動かしていたのが見えたけれど、俺の頭はうるさいくらいの音が鳴り響いていて聞こえなかったんだ。




病院に行った時のことも、そのあとも。全く覚えていない。



はっきりしているのは





俺は再び独りになってしまったということだけだった――――――













俺は毎日、高校が終わると一ノ橋公園のベンチに座る。




こうして座って待っていれば、彼女が背後から声を掛けてくるのではないか。両手で目を覆ってきて、いたずらっぽい微笑みを向けてくるのではないか…。


そんなことを思ってしまうから。






だけど





そんなことは起こらない





二度と起こらない










いつものようにベンチに座り続けて日が暮れる。

周りには誰も人がいなくなり、街灯が点いて、主がいなくなった月が優しく光を放つ。





「うさこ…そこにいるのか?」




愛する人の笑顔を思い出してしまうその月の姿に、涙を止めどなく溢れさせて呟く。



だけど当然月は何も答えてなどくれない。



「もしそうなら…俺も連れていってくれ…」



うさこ




どうして?





どうして死んだんだ?






君を失って





俺はもう何も愛せない






「うさこ」





もう何度呼び掛けたか分からないそのことば。




『まもちゃん』




そんなはずは決して無いと思っていたその声が空に浮かぶそれから聞こえてきて、全身が粟立つ。





あの時の…最後の彼女の言葉が降り注いでくる。






『まもちゃん…生きて』











一度溢れ出した涙は止まらなくて。月も滲んで…泣いているように見えた。




なあうさこ




一緒に…泣いてくれるか?






今日みたいに満月の夜には君を思ってただ泣きたい。








君の最後の願いを叶える代わりに――――――


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