一瞬で(エンセレ)

退屈だ。


クンツァイトから渡された次の国政の議題についての書類に目を滑らせながら、俺は誰にも悟られない程の小さな溜め息をついた。


ここは地球国の王国ゴールデンキングダム。

その王子エンディミオンである俺は、自室のテーブルに置かれた山のような書類を見てもう一度溜め息をついた。




毎日毎日他国との会議、パーティーへの出席、次期国王になるための徹底した教育カリキュラム…。

表面的には忙しいことこの上ない。


それでも




退屈だ。



自由なんてない。一人になれることもない。
寝ている時ですら、一枚壁を隔てた向こうには常に護衛がいる。


友もいない。


幼かった頃はもう少し対等に話したり剣の稽古をしていたはずの四天王も、13の年で成人の義を済ませてからは王位継承権一位の俺と、その臣下という見えない線引きが色濃くなってしまったように思う。



この立場になってみなくては分からない孤独。



心の中には圧倒的な空虚感―――――





でもそんな状況を、甘んじて受け入れている王子としての自分も存在していた。

歴代、王になる者は皆そうしてきたし、国や民のために最善を尽くし、人々から信頼を得るためには己の心を犠牲にすることは仕方ないことなのだと。


事実それは正しい。四天王たちも俺にそのように願っているのだろう…。
最近はほとんど事務事項しか話していないからその真意の程は分からないけれど。


とにかく自分が治めるであろう、この美しい国のことを愛しているという気持ちは紛れもない本心であったし、その国を守り、より良くしていきたいという志は揺るぎない事実だった。





そしていつかこの国のどこかの女性と国の為に結婚をし、跡取りを作る。


それが自分に与えられた人生であり、使命であるということを信じて疑っていなかった。




そう。貴女に出会うまでは――――――






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