beside U(まもうさ)

診察が終わると湿布と替えの包帯を処方された。

診察中もずっと私のそばにいてくれたまもちゃん。
結果はやっぱり軽い捻挫で、それを聞いた彼は小さく息を吐いてほっとしていたみたい。



病院を出ると、まもちゃんはまた当然とばかりに背負う体勢になって待っていて。足が痛かったのも本当だけど、くっついて甘えたいっていう気持ちもどこかにあって…。
私は今度は素直にその身を背中に預けることにした。


あったかくて広いまもちゃんの背中。

ドキドキ。私の心音だけじゃなくて彼の音も聞こえてくる…。

そのリズムも一緒な気がして、それだけのことが何だかちょっぴり嬉しかった。




月野家までの帰り道。夕陽が優しく辺りを包んで、私達の影を長くする。



「まもちゃん。」

「ん?」

「ごめんね。」

回していた腕に少し力を込める。

「俺に謝ることなんて、一つもないよ。」

「まもちゃん…」

「ただ…」

「ただ?」

「今敵が襲ってきたらどうするつもりだ?」

まもちゃんの冗談めかしたその言葉に

「だ…大丈夫だもんこれくらい!!」

ついついむきになって反論してしまう。
そしたら笑い混じりに「頼みますよ正義の戦士さん?」

なんて言われて。

「以後気を付けまーす…。」

トーンダウンしてそう返す。
その言葉に彼は苦笑したあと、少しの沈黙が流れる。




「まもちゃん?」

「あ…いや、俺もさ、十番中学の生徒だったらなって思っただけ。まあ、無理なんだけど…。」

「え…。」

私が驚いていると彼は続けて話す。

「そそっかしい彼女の側にいつもいられてすぐに守れるし?」

「もう!」

「はは…冗談。」


そこまで話したらもう既に家の前。

「じゃあ、お大事にな。」

私を背中から下ろした彼は優しい眼差しでそう言った。

「うん。ありがと。」

私もにっこりと微笑み返す。

「本当は…。」

「え?」

少し思い詰めた表情で話す彼。

「本当は、俺もあと三年遅く生まれたかったよ。そしたらうさこと同じ十番に通って…今よりもっと一緒にいられるのにって…。」

「まもちゃん…」

「きっと、楽しいんだろうなって…思った。」

そうやって恥ずかしそうに笑う彼はどこか寂しそうで…。

私は迷わず彼の胸に飛び込む。

「私もね?」

「うん。」

「同じこと、思ったよ?」

「…うん。」

返事をしたあと、彼の腕が腰に回って私を抱き締め返す。

「でもね。」

「…ん?」

「私の知ってるまもちゃんも、まだ知らないまもちゃんも…どんなまもちゃんも…好き。」

「うさこ…。」

へへっと笑いながら大好きな彼の顔を見上げる。

「俺も…。心配で来た、なんて言ったけど…本当は会いたくて…ただ会いたくて…走ってきたんだ。」

「まもちゃん…」

すると彼の手が優しく頬を撫でる。それが合図。


「好きだ…。」

低い声でそう囁かれて…私達はキスを交わす。


「何だか…離れたくないな…。」

いつになくそう言う彼に胸がときめいて、足の痛みも忘れた私はもう一度大好きなあなたに抱きついた――――






おわり
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