桜と君と(まもうさ)

久し振りに降り立つ日本の空気に思いを預ける余裕もなく、俺は駆け足で入国手続きを済ませて荷物を手に持つと、うさの待つゲートへと急ぐ。



2つのお団子頭は目立つから、すぐに見つけられると思った。

しかし俺はざっと辺りを見回すが、どうしたことか彼女の姿を確認できない。


俺がいつになく慌ててその場を離れようとしたその時――――




「まもちゃん!!」



今しがた確認していたはずの場所から彼女の声がして驚いて振り向く。



「う…さ?」



そこにはいつもの髪型ではなく、アップに一つの団子にまとめて、サイドにフワリと緩かなカールした髪が揺れている一人の女性が立っていた。

口元を見れば、ほんのり桜色のグロスを付けていて、白いワンピースにパステルブルーのカーディガンを羽織っている姿は、なぜだかすごく大人を感じて…。


「…。」


言葉が出なくて立ち尽くしている俺に、君は一歩一歩近付いてくる。


「あのー…まもちゃん?」

「うさ…」

「やっぱり…似合ってな…」



俺はうさの言葉が言い終わらないうちにその体をグイと引き寄せ抱き締める。

「似合ってなくない。…やばい。」

「ふぇ?」

自分の置かれている状況に付いていけてないうさは気の抜けた返事をするものだから俺は思わずクスリと笑ってしまった。

「すごい可愛い…いや、綺麗だよ。」

ボン!!!

そんな音が聞こえそうなくらい彼女の顔が赤くなるのが分かったけれど、俺は続けて話す。

「ただいま。うさ…愛してる…。」




そして桜色の唇にこの春、一番目のキスを贈った――――






おわり
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