桜と君と(まもうさ)

そして今。再び春を迎えて俺は海の上を飛んでいた。
今度は大切な彼女が待つ場所へ。


飛行機の中では、どうしてもはやる気持ちが抑えられなくて…あまり眠ることもできなかった。
気分を変えようと本を開いても、気付いたらずっと同じところを繰り返し読んでいる始末。

諦めた俺は、アメリカから発つ直前に届いたうさからの手紙をもう一度読むことにした。



『愛するまもちゃんへ

この手紙、間に合うかなあ?どうか読んでもらえますように。

まもちゃんがアメリカに留学してから、一年がたつんだね。長かったような、短かったような…ううん。やっぱり長かったよ。

私も高校卒業です。
まもちゃんがいなかった間、本当はすごーく寂しかったけど、全然、ほとんど…ちょっとしか泣かなかったんだよ?

まもちゃんが夢に向かってまっすぐ頑張っている姿は、やっぱり彼女としてもうれしいことだから。

それでね!
私も、夢。見つけました!
あ!お嫁さんだと思ったでしょ?

半分当たりで、半分ハズレ!えへへ~♪

えー、発表いたします!月野うさぎの将来の夢は…


保育士さんです!!


実はこの一年、万年赤点だった私が頑張って勉強して、無事に短大に合格したの!



へへ♪びっくりした?

言ってなかったもんね。

受かるまでは秘密にしようと思ってたんだ!

言ったらすごく頼っちゃいそうだったから…。


私ね、お医者さんになる夢を確実に一歩一歩実現するために進んでいるあなたの背中を見て、思ったの。

追い掛けるばっかりじゃなくて、並んで歩ける女性になりたいって…。



だから私も夢を見つけて自分の力で頑張ってみようって思ったんだよ?



早くまもちゃんに会いたいな。会って、オトナになった私を見せたいです!なーんてね☆


そしていつか…地場うさぎになりたいな~。

きゃっはー!!

じゃあ、空港で待ってるね!


あなたのうさより☆』



この手紙を読んだとき、うさの言う通り俺は驚いていた。

いつの間にか少女から大人の女性に変わっていくということを気付かされた。


俺のよく知っているうさと…まだ出会ったことのないうさがいるような、不思議な気持ち。



だけどそんな彼女の変化の一端に、俺が深く関わっているのだということも改めて知り、嬉しかったのも事実だ。




俺は丁寧に便箋を折り畳んで封筒に戻す。

そして宛名が書いてある見慣れた文字の羅列に自ずと頬を緩ませた―――

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