桜と君と(まもうさ)
桜が咲く頃は、別れと出会いの季節。
君と出会う前は、そんな季節もただ淡々と過ぎていき、目の前を出たり入ったりする人々や、変わっていく環境もまるで自分自身に起きている出来事ではないような気がしていた。
それはちょうど、静かな白黒映画を何の感情も持たずに観ているかのような。
そんな感覚。
俺は初めて、この季節に言い様の無い寂しさを感じ、再び同じ季節が巡ってきた今、どうしようもないくらいの嬉しさが心の内から滲み出てくるのを感じていた。
一年前…アメリカのマサチューセッツにあるハーバード大学に再び留学を決心したのは、他でもない、彼女の後押しがあったから。
ギャラクシア、カオスとの戦いを経て、俺たちはようやく共に歩み出すことができた。
正直、俺の中で留学するという選択肢は無くなっていた。
だけどうさと平穏な毎日を繰り返しているうちに、ふとした時に地場衛としての願望がちらちらと頭を掠めることがあった。
うさは、普段はどうしたものかと軽く頭を抱える程に鈍感なのに、時々とても鋭いことがあって…。
俺のそんな勉強に対する貪欲な思いをやはり気付いてしまったのだ。
「私は、大丈夫だよ?みんながいてくれるから。今度こそ絶対泣かないで見送れる。」
どうしてだろう。
確かにあの時よりも、大丈夫。そう思えた。
うさは繰り返される戦いでセーラームーンとして驚くほど強く成長していった。
けれど、反対に月野うさぎとしては深い闇…孤独を背負っていて、糸が切れればすぐにでも足元を見失ってしまうのではないかと思えるほどの弱さを抱えていた。
でももうその儚さが無くなっているのをはっきりと感じた。
きっと、月野うさぎという一人の少女…人間としての強さが彼女をそうさせたのだろう。
そんな彼女が心からの笑顔で、心から俺を応援して送り出してくれようとしている。
「ありがとう。」
俺はそう一言だけうさに伝えると、彼女のカタチを刻み込むように抱き締める。
その温もりは初めてそうした時と変わらぬ安心感を俺に与えてくれる。
彼女の気持ちに対する嬉しさと、しばらくこの温もりを感じることができないことに切なさで胸が震えた―――
うさが泣かない分だけ、俺が寂しさに心が支配されそう…なんて勝手な事を言ったら、君は心配するだろうか?それとも呆れる?
しかし俺は思い出していた。
本来地場衛という人間は、感情をうまく出せなかっただけで幼い頃から酷く寂しがり屋だったということを。
俺は小さく笑うともう一度彼女をきつく抱き締めた。
そうして、大学二年の終わり、桜の蕾が少しずつ開花していく頃、俺は愛しい彼女のもとを離れて海を渡る。
「行ってらっしゃい!」
空港に見送りに来た君は、本当に泣かずにそう言って、まるで暖かな春の空気そのままのような笑顔で俺にいつまでも手を振っていた。
その時確信したんだ。
俺の帰る場所
心の居場所は
いつでも君の所、君の中にあるのだと―――――
君と出会う前は、そんな季節もただ淡々と過ぎていき、目の前を出たり入ったりする人々や、変わっていく環境もまるで自分自身に起きている出来事ではないような気がしていた。
それはちょうど、静かな白黒映画を何の感情も持たずに観ているかのような。
そんな感覚。
俺は初めて、この季節に言い様の無い寂しさを感じ、再び同じ季節が巡ってきた今、どうしようもないくらいの嬉しさが心の内から滲み出てくるのを感じていた。
一年前…アメリカのマサチューセッツにあるハーバード大学に再び留学を決心したのは、他でもない、彼女の後押しがあったから。
ギャラクシア、カオスとの戦いを経て、俺たちはようやく共に歩み出すことができた。
正直、俺の中で留学するという選択肢は無くなっていた。
だけどうさと平穏な毎日を繰り返しているうちに、ふとした時に地場衛としての願望がちらちらと頭を掠めることがあった。
うさは、普段はどうしたものかと軽く頭を抱える程に鈍感なのに、時々とても鋭いことがあって…。
俺のそんな勉強に対する貪欲な思いをやはり気付いてしまったのだ。
「私は、大丈夫だよ?みんながいてくれるから。今度こそ絶対泣かないで見送れる。」
どうしてだろう。
確かにあの時よりも、大丈夫。そう思えた。
うさは繰り返される戦いでセーラームーンとして驚くほど強く成長していった。
けれど、反対に月野うさぎとしては深い闇…孤独を背負っていて、糸が切れればすぐにでも足元を見失ってしまうのではないかと思えるほどの弱さを抱えていた。
でももうその儚さが無くなっているのをはっきりと感じた。
きっと、月野うさぎという一人の少女…人間としての強さが彼女をそうさせたのだろう。
そんな彼女が心からの笑顔で、心から俺を応援して送り出してくれようとしている。
「ありがとう。」
俺はそう一言だけうさに伝えると、彼女のカタチを刻み込むように抱き締める。
その温もりは初めてそうした時と変わらぬ安心感を俺に与えてくれる。
彼女の気持ちに対する嬉しさと、しばらくこの温もりを感じることができないことに切なさで胸が震えた―――
うさが泣かない分だけ、俺が寂しさに心が支配されそう…なんて勝手な事を言ったら、君は心配するだろうか?それとも呆れる?
しかし俺は思い出していた。
本来地場衛という人間は、感情をうまく出せなかっただけで幼い頃から酷く寂しがり屋だったということを。
俺は小さく笑うともう一度彼女をきつく抱き締めた。
そうして、大学二年の終わり、桜の蕾が少しずつ開花していく頃、俺は愛しい彼女のもとを離れて海を渡る。
「行ってらっしゃい!」
空港に見送りに来た君は、本当に泣かずにそう言って、まるで暖かな春の空気そのままのような笑顔で俺にいつまでも手を振っていた。
その時確信したんだ。
俺の帰る場所
心の居場所は
いつでも君の所、君の中にあるのだと―――――