空に掛かる橋(まもうさちび)

駅に着いて改札を出ればすっかり雨が本格化していた。

ちびうさはリュックから育子ママが買ってくれたウサギ柄のレインコートを取り出して着ると、傘を差す。

衛がすぐにちびうさの買った服の入った袋を持ってやると、大きな傘を差してうさぎを入れる。うさぎはレインコートを着た少女と手を繋いだ。

ちびうさは繋がれた手の柔らかさと温かさに、小さな傘の下で微笑む。

うさぎも衛と身を寄せて、その小さな存在に愛しさが沸いて微笑み合った。




「ねえ」

うさぎが口を開く。

「3人って…いいね。」

ちびうさの頬が微かにピンクに染まる。

「うさがそんなこと言うなんて、珍しいな。」

いつも口ではちびうさのことを子どもっぽくお邪魔虫扱いしていることが多いのに…。衛はそう思った。
もちろんそれが本心でないこと位、知っていたけれど。


「たまにはこういう気分になるんですー!こんな雨の日は、特にね。」

うさぎはいつかの寂しい心の隙間が、今は全く感じなくなっていることを思いながら満足そうに傘から落ちる水滴を見ていた。


ちびうさは何も言わずに、ぎゅっと繋がれた手を握る。

それに気付いた彼女は、再び微笑むとぎゅっと握り返す。

そんな2人の様子を、衛は目を細めて見守っていた。




月野家の前まで着くと、雨が上がり、雲間から陽の光が差し始めた。


「まもちゃん、送ってくれてありがと!」


2人は大好きな青年に満面の笑みを送る。


傘を閉じて買い物袋をちびうさに返すと、衛は陽の光に照らされた大切な2人の笑顔を見て、とても満たされた気持ちになっていた。


「ああ。また明日な。」


また明日。


こうして約束をして会える幸せ。




「あ!虹だよ!!」



ちびうさが空を指差して瞳を輝かせる。


3人はしばらく空に掛かる七色の橋を嬉しそうに見つめていた。



「虹って、曇や雨や晴れ…。全部の天気を繋いでるみたいだね。」



うさぎがぽつりとそう言った。

衛とちびうさはその言葉に振り向いて、自然とその手をうさぎに繋げる。




繋ぐ手と手。



3人の間には、まるで虹にも似た絆が確かにそこにあった―――――








おわり
5/5ページ
スキ