喧嘩の後で(まもうさ)
私は悔しいやら情けないやらでポタポタと涙を流す。それが、一滴一滴…時計を濡らしていった。
すると視界が少し暗くなる。それが誰かの影だということに気付くと、とても懐かしいものが目の前に突き出された。
『2年1組 月野うさぎ』
そう書いてある見覚えのあるハンカチ。
「ごめん。」
私が驚き、目を見開いていると、走って少し息の上がった彼の声が降ってきた。
「まもちゃん…これ…」
「涙、拭いて?」
私の質問には答えずに気遣う彼。
言われるがまま、すでに止まった涙を拭う。
「ずっと返しそびれてた。舞踏会で拾ったあの時から…。」
まもちゃんは私の隣に座ると、頭をよしよしと撫でながらポツリと呟いた。
「あの日の君は、本当に綺麗で可愛くて…大切な思い出だから、何だか手放せなかったんだ。」
「まもちゃん…。」
「それなのに今は、うさが居てくれるのが当たり前すぎて、すっかりそれに甘えて…安心しきってた。
こんな不甲斐ない彼氏でごめんな。」
何だか本当に情けなさそうに言うから、思わず私は吹き出してしまう。
「こーら。」
まもちゃんは子どもみたいに拗ねた顔をして私の頭を軽く小突く。
「私もあんなことしちゃってごめんなさい。
でね、思い出してたの。懐中時計を見て…。あ!私もこれ返さなくちゃ!」
「いいよ。うさが持ってて?」
まもちゃんは優しい眼差しで私を見つめ、頬を撫でながらそう言った。
「ううん。まもちゃんが持ってて!」
「…でも」
「そいで、私が洗濯したら、ハンカチとトレードしよ!」
数年ぶりに返ってきたハンカチを振りながら提案した。
交換の交換。
かつての持ち主に戻るよりも、大切なひとに大事な思い出と一緒に持っていて欲しいから―――
「分かった。絶対…だぞ?」
「うん!」
あの日のように交わされた約束。でもあの日よりももっと私たちの関係は温かくて、確かなものになっている。
「まもちゃん!私、どっちにするか決めた!!やっぱりマリンカラーにする!」
再びさっきの店内。デートの仕切り直し。
「いや、うさにはこっちが似合ってるよ。」
そう言ってドットのワンピースを差し出す彼。
「えー?ホント?」
「ホント。」
そして耳元に顔を寄せると、
「絶対こっちのほうが可愛いよ」
と低くて甘い声で囁かれた。
おわり
すると視界が少し暗くなる。それが誰かの影だということに気付くと、とても懐かしいものが目の前に突き出された。
『2年1組 月野うさぎ』
そう書いてある見覚えのあるハンカチ。
「ごめん。」
私が驚き、目を見開いていると、走って少し息の上がった彼の声が降ってきた。
「まもちゃん…これ…」
「涙、拭いて?」
私の質問には答えずに気遣う彼。
言われるがまま、すでに止まった涙を拭う。
「ずっと返しそびれてた。舞踏会で拾ったあの時から…。」
まもちゃんは私の隣に座ると、頭をよしよしと撫でながらポツリと呟いた。
「あの日の君は、本当に綺麗で可愛くて…大切な思い出だから、何だか手放せなかったんだ。」
「まもちゃん…。」
「それなのに今は、うさが居てくれるのが当たり前すぎて、すっかりそれに甘えて…安心しきってた。
こんな不甲斐ない彼氏でごめんな。」
何だか本当に情けなさそうに言うから、思わず私は吹き出してしまう。
「こーら。」
まもちゃんは子どもみたいに拗ねた顔をして私の頭を軽く小突く。
「私もあんなことしちゃってごめんなさい。
でね、思い出してたの。懐中時計を見て…。あ!私もこれ返さなくちゃ!」
「いいよ。うさが持ってて?」
まもちゃんは優しい眼差しで私を見つめ、頬を撫でながらそう言った。
「ううん。まもちゃんが持ってて!」
「…でも」
「そいで、私が洗濯したら、ハンカチとトレードしよ!」
数年ぶりに返ってきたハンカチを振りながら提案した。
交換の交換。
かつての持ち主に戻るよりも、大切なひとに大事な思い出と一緒に持っていて欲しいから―――
「分かった。絶対…だぞ?」
「うん!」
あの日のように交わされた約束。でもあの日よりももっと私たちの関係は温かくて、確かなものになっている。
「まもちゃん!私、どっちにするか決めた!!やっぱりマリンカラーにする!」
再びさっきの店内。デートの仕切り直し。
「いや、うさにはこっちが似合ってるよ。」
そう言ってドットのワンピースを差し出す彼。
「えー?ホント?」
「ホント。」
そして耳元に顔を寄せると、
「絶対こっちのほうが可愛いよ」
と低くて甘い声で囁かれた。
おわり