その名前は(クン美奈)
私達は店を出ると、未だにくすくす笑っている北崎に、「じゃ」と、短く別れを告げてすぐに踵を返して歩いていった。
でも、私の足はすぐに止まることになる。今にも泣き出しそうな一人の女性の声によって。
「賢人!!!」
振り向けば、北崎の元に駆け寄り、涙を流してその胸に飛び込む女の人が目に入る。
何?
誰よ…?
私が目の前で抱き合う二人に混乱しながら立ち尽くしていると北崎がそっと彼女の肩に手を置く。
「沙紀…。」
北崎の口から出た彼女の名前。その響きには重みがあって…二人の間には
誰も入り込めない空気を感じた。
「嘘みたい…賢人!本当に賢人なのね!?」
そう言って彼の顔を撫でる彼女はとても綺麗で…。着ている服なんかも大人っぽくて。
あーこの男はこういう女の人が好みなんだ。と、やたらに冷静に考えている自分がいた。
そうだよ。彼はクンツァイトじゃないんだから。恋人がいたっておかしくないんだった。
いいんじゃない?別に
私には関係ないわよ
関係ない――――
チクン
胸の奥が少し痛い
でもこれは気のせい
気のせいなんだから
私は今度こそ彼らに背を向けて走り出した。
「愛野!!」
彼が私をそう呼ぶ。
やだ。変なの。自分でそう仕向けたくせに…。
彼女を呼ぶ名前と、私を呼ぶときの名前…
何て開きがあるんだろう――――
私は頬が何かで濡れている気がしたけれど気付かないフリをしてそのまま走り続けた。
でも、私の足はすぐに止まることになる。今にも泣き出しそうな一人の女性の声によって。
「賢人!!!」
振り向けば、北崎の元に駆け寄り、涙を流してその胸に飛び込む女の人が目に入る。
何?
誰よ…?
私が目の前で抱き合う二人に混乱しながら立ち尽くしていると北崎がそっと彼女の肩に手を置く。
「沙紀…。」
北崎の口から出た彼女の名前。その響きには重みがあって…二人の間には
誰も入り込めない空気を感じた。
「嘘みたい…賢人!本当に賢人なのね!?」
そう言って彼の顔を撫でる彼女はとても綺麗で…。着ている服なんかも大人っぽくて。
あーこの男はこういう女の人が好みなんだ。と、やたらに冷静に考えている自分がいた。
そうだよ。彼はクンツァイトじゃないんだから。恋人がいたっておかしくないんだった。
いいんじゃない?別に
私には関係ないわよ
関係ない――――
チクン
胸の奥が少し痛い
でもこれは気のせい
気のせいなんだから
私は今度こそ彼らに背を向けて走り出した。
「愛野!!」
彼が私をそう呼ぶ。
やだ。変なの。自分でそう仕向けたくせに…。
彼女を呼ぶ名前と、私を呼ぶときの名前…
何て開きがあるんだろう――――
私は頬が何かで濡れている気がしたけれど気付かないフリをしてそのまま走り続けた。