ねえまもちゃん(まもうさ)
そうだ。まもちゃんがその気にならないなら私がその気にさせればいいんだ!
私は子どもじゃないんだって、はっきり言えばいいんだ!!
「ちょ、ちょっとうさぎ!?」
背後に私を呼び止めるなるちゃんの声が聞こえたけれど、私は鼻息荒くズンズンとまもちゃんの家の方へ歩いて行った。
で、今に至る訳なんだけど…。
どうしよう。変に緊張してきちゃったよ!
すっかりあの勢いを無くしてしまっていた。
「うさこ?」
呼ばれてふと俯いていた顔をあげると、目の前にまもちゃんの顔があった。
「うわ!?」
私は思わず顔を真っ赤にして一歩後ろに下がってしまう。
「何だよ、うわって。急に黙り込んで一人で百面相を始めるから呼んでみただけだろ?」
「あ…あははは!ごめんごめん!」
明らかに怪しい。私、怪し過ぎるよ…。
「ま、いいけど?今度は何に悩んでるんだ?」
私の顔を見ながら優しく「ん?」と言って頭をポンポン叩く。
私…この大きくて温かい手、好きだな…。
さっきまで考えていたことなんてどっか行っちゃうくらい、今、この瞬間、あなたにドキドキしてる…。
「とりあえず、コーヒーでも飲むか?」
まただんまりになってしまった私を見てまもちゃんはそう言ってくれたけど…
私はそのまま彼の胸に顔を埋めて背中にキュッと腕を回す。
「ううん、いい。コーヒーは、いらないの。」
だけど何て言ったら良いのか分からなくて。真っ赤な顔を見られたく無くて。私はただ彼の胸に体を預けていた。
頭をよしよしとゆっくり撫でながら、そのまま頭のてっぺんに優しくキスをされる。私はどういう訳かビクッと体が反応してしまう。
いつもされている何気ない彼のスキンシップが、私の心の中の波を大きく揺らす。
「…うさこ…?」
いつもと違う私の雰囲気に気が付いたのか、彼は探るような声で私を呼ぶ。
私は言葉では表現しきれないこの気持ちを何とか伝えたくて。自分でも信じられないけれど気が付いたらまもちゃんにキスしてた。
どうしたんだろう、私…。
私がいて
あなたがいて
一緒にいられたら私はそれだけで幸せだった
私が話し掛ければ、本を読む合間に大好きなちょっと低い声で相槌をしてくれて
私が肩に甘えてもたれたら、優しく片手で抱き止めてくれて…
それだけでも嬉しかったの
だけど…今は…
キスの後、私がゆっくりと目を開けると、少し…ううん、大分顔を赤くしたまもちゃんがいた。
「うさこ、どうしたんだよ…?」
照れたような困ったような顔で私の瞳を覗き込む。
「ごめん…突然私から、なんて。…嫌だった?」
「嫌な訳ないだろ!?」
私の肩を掴んでいた手の力が強くなる。一瞬、まもちゃんの中に、私の知らないあなたが見えたような気がした。
また胸がドキドキ波打つ。
でも、すぐに手の力は緩んで、まもちゃんは私からなぜだか少し距離を置いてしまった。
「…あ、いや…やっぱりコーヒーでも飲もうか。落ち着いて話そう。」
何だか自分に言い聞かせるようにふうっと息を吐いて言った。
「……じゃないよ。」
「え?」
「私、子どもじゃないよ!!」
自分でも急に大声を出してしまったことにビックリしてしまう。
それはまもちゃんも同じで、目を見開いて私を見ている。