遠い約束(エンセレ)
「ねえエンディミオン」
いつもの好奇心いっぱいの瞳で俺を見る愛しい君。
俺はそんな君の額に掛かる髪をそっと上げて三日月の印にキスを落とす。
「なんだい?セレニティ。」
俺の行為に驚き少し照れたような表情を浮かべ、その頬をピンクに染める。
俺の大好きな表情の一つだ。
答えなんて聞かずにそのまま腕の中に閉じ込めてしまいたくなるけれど、さっきのキラキラした瞳を思い出し、肩に腕を回すだけに止めた。
「あのね、地球の草花の本でクローバーっていう素敵な植物を見付けたの。」
「ああ、四つ葉の?」
ロマンチストな彼女らしいと思った。
「そう。願い事が叶う四つ葉のクローバー。私…絶対見付けるわ!」
彼女の目は少し潤んでいるように見えた。
会う度に想いは募り、会う度にいつまでもこの幸せが続くことなどないのだと思い知らされる…。
それでも君といる一時は一生分の幸せだと感じていた。どんなに許されない恋でも今この一瞬一瞬を永遠に心に刻み込んで生きたい。
そう思っていた。
でもそう思うということは君との未来は有り得ないのだと言っているようなもので。
おそらく君はそんな俺の心を見透かしていたのだろう。
だから
―ずっと一緒にいられるように―
きっとそれが君の願い事。
「私、見つけ出して貴方に贈るわ。」
既に瞳に一杯になっていた涙は溢れて頬を伝っていた。
俺はそっとそれを拭って抱き締め、今度は唇にキスを落とした。
静かに、労るように…
「俺も、君に贈るよ。」
彼女は俺の背中に腕を回してぎゅっとしがみつく。
「約束ね。」
俺も抱き締める力を少し強くして彼女の額にもう一度唇を寄せる。
「ああ、約束だ。」
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