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結局二枚のチケットの行方がどうなったかすら分からずにピアノのミニコンサートの日が来てしまった。
本番前の会場の入り口で、ピアノを弾くことよりも緊張している自分がいることに気付いていた。
今日は朝から流石に傘が必要な雨が降り続けている。
雨だから
もしかしたら
そんな根拠も無いことで余計な期待を抱いてしまう時点でもう、自分の心は誰にあるのか認めてしまっているようなものだった。
すでに沢山の傘の群れが会場に向かってきては消えていった。
でも、彼女の姿はどこにもない。
本当はいつまでも待っていたい。
待っている。
そう思っていたけれど。
こんなに素直じゃない自分が彼女を待つ資格なんてどこにも無いような気がしてくる。それに…
「あの調子だったら、来る訳もない、か。」
ふっと微笑を浮かべて諦めようと背を向けたときだった。
「遅れちゃうよー早く早くー!!」
「もう!うさぎちゃんが遅れたんじゃない!」
よく知っている声が聞こえてきて勢いよく振り返る。
「あなたたち…。」
「西園寺さん!何してるんですか!準備しないともう間に合いませんよ!?」
傘を畳むなり私よりも真剣な顔をして捲くし立てる彼女に呆然とする。短い水色の髪は少しだけ雨の雫で濡れていた。
上がる息はここまで来るために、自分に会うために急いで走ってきた証。
そう思って…いいの?
何で来たのとか、私の事嫌いでしょとか色々聞きたかったのに。とにかくその真っ直ぐな瞳が全部をどこかへ飛ばしてしまった。
「分かってるわよ。とりあえず、あなたたちの席は一番良い席なんだからちゃんと最後まで聴きなさいよ。」
それだけ言うと私は舞台そでまで駆け出した。
どうしてだかは分からないけれど、とにかく亜美は来てくれた。
それなら、私の口では伝えられない想いをせめてピアノに託すから。
絶対最後まで大人しく聴いてなさいよ。
『待ってたよ』
『今度こそ自分から伝えるから』