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いつも彼女たちが集まるパーラークラウンに大学が終わった後に立ち寄る。

今日はバイトも何も無くて天気は曇り。どうせなら雨が降れば良いのにと思うくらいの薄暗さだった。

天気予報はどうだったかしら。でもあまり気にしたことって無いのよね。何せ自分が一番好きな天気はおそらく殆んどの人間が嫌うものだったから。



店内をぐるりと一瞥すると、どこにいても目立つ五人組の姿がすぐに目に入った。

やっぱり五人でいるのか。

仲が良いのはよろしい事だけど大人数で話すのはそこまで好まない自分にとって(賢人たちは別として)、あの輪の中に入っていくのはどうも面倒で短く息を吐いた。


「あれ?要さんだ!一人なんですか?」

そう声を掛けてきたのはチンチクリン娘、月野うさぎだった。なんであなたが一番最初に気付くのよ。

私はその言葉はスルーして奥で参考書を片手にしている彼女のことを見る。

うさぎの言葉で私の存在に気付いた彼女は、眼鏡の奥で何とも掴めない色を浮かべた後、すぐに英文に視線を戻してしまった。


なにそれ。


確かにこの前の自分の態度はちょっと悪かったって思ってたけど、あからさまに無視されると傷つくわよ。私だって。

「ちょっと、あなた挨拶もしないわけ?」

「こんにちは~!」

すぐ横から能天気なこぶ付き頭の声が飛んできて「あんたじゃないわよ!」とキッと睨んで黙らせた。

「すみません西園寺さん。こんにちは。先日は大変失礼致しました。」

眼鏡を外しながら私を見て至極他人行儀な言い方で話す彼女にカッと頭が熱くなる。

「え?何!?なんかあったの亜美ちゃん!」

興味津々に食いついたのは彼女たちのリーダーだ。レイは我関せずといった具合にアイスコーヒーを口にし、まことは一触即発の雰囲気を壊すようなリーダーの発言にハラハラしている。

「別に特に何も無いわ。会ったのだってその一度きりだし。」



なんなのよこの子。傘を差し出してきたときはあんなにしおらしい顔で、遠慮がちだけど少しは微笑んでいたのに。

そんなに無愛想な顔で私との間に何も無かったみたいな事言うこともないでしょ。


勢いのまま持っていたチケットを何も言わずに机に叩きつける。その大きな音に静けさが訪れて、まるで果たし状でも突き付けるかのように押し殺した声を出した。

「私、これに出るから。じゃ。」

「え!?チケット二枚しかないんですけど!!」

背を向けて歩き出したところでうさぎに大声で呼びかけられる。

「聴きにきたい人だけくればいいでしょ!」

それだけ言うとちらっと奥に座る彼女を見る。けれど相変わらずその目は参考書に落とされていて、胸の奥がツンと痛くなる。

そしてその後は一度も振り返らずに店を出た。







「ああーもう!何やってんのよ!」

自分を叱咤すると、周囲の視線にも動じずに仕方なく家に向かう。


本当は、この前の気まずさから少しでも脱しようと用意したモノだったのに。

あまりにも彼女が可愛くないこと言うものだからすっかり予定が狂ってしまった。



だけど、傘を差し出してくれた彼女を突き放したのは自分なのだ。

もしかしたらあの時、他にも彼女は何かを言おうと思っていたかもしれない。

そんなものを壊してしまったのも自分だ。



だからこそ、今日は少しでも――――





「小娘相手にホント、何やってんだか。」

いつもよりも低い声でそう零す。


けれどどうしたらこの状況が変わるのかさえ分からずに溜め息を漏らすと再び歩みを進めるのだった。

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